電車の混雑率測定方法には大きな問題がある

定員増やすために座席数を減らしている現実

平成27(2015)年の混雑率を見て驚かせられるのは、大阪圏の鉄道各路線の混雑率が大きく低下していることである。特に、昭和60(1985)年には200%を超えていたJR路線が軒並み定員乗車に改善している。これは、東海道線については、JR東西線のようなバイパス路線が開通したことが影響しており、大阪環状線城東側も阪和線・関西線から西成側への直通列車が増えて旅客が分散したことが大きい。また、阪神なんば線の開業により従来大阪駅を経由していた旅客が直接「ミナミ」に向かうことができるようになったこともある。

そればかりでなく、JR西日本の場合、電車の定員の増加も混雑率の低下の要因となっている。

着席輸送には程遠い

国鉄時代の1979年に東海道・山陽線の大阪地区新快速用に投入された117系(2扉転換式クロスシート)先頭車の表記定員は座席58人と立席8人の66人であった。一方、JR発足後の1989年に登場した221系(3扉転換式クロスシート)先頭車の表記定員は座席60人立席73人の計133人(中間車は144人)である。

東海道線芦屋→大阪の最混雑時1時間の1両当たりの輸送力(混雑率の算定基準)は、1985年に105人であったが、1992年に117系が新快速から撤退すると126人に増加した。また、1999年に東海道・山陽線での117系の使用が終わると138人に増加した。

また、東海道・山陽線緩行電車塚本→大阪では、1985年の1両当たり輸送力は140人で国鉄と同じであるが、1994年に広幅の207系の運用が始まると146人に、2006年に国鉄形が撤退してすべて広幅車に統一されると152人に増加した。

JR西日本の場合、標準定員に換算せずに表記定員をそのまま混雑率の算定に使用しているのである(※1)。そのため、新快速では標準定員で計算するよりも、定員がやや大きくなり(※2)、その分混雑率が低く公表されていることになる。

このように混雑率を政策目標として使うには、その算定方法にいろいろな問題があるが、そればかりでなく、混雑率が100%であっても座席数は定員数の3分の1にすぎず、定員輸送とはいっても混雑している印象があるし、ましてや着席輸送には程遠い状態である。

そもそも、JR西日本の221系の場合の先頭車の定員133人は、国鉄時代の4扉オールロングシートの車両の定員数とほぼ同じであり、オールクロスシートにこれだけの人数を詰め込むと、定員乗車でも相当な混雑感である。

想像するに、JR西日本は私鉄ではないので定員数を国鉄基準である標準定員へ換算することは求められないが、JR化後に導入した3扉オールクロスシートは国鉄時代に相当する車両がないため、独自の基準で立席数を計算しているのであろう。

また、車体は同一でもクロスシートをロングシートに置き換えるだけで定員が増加して混雑率が低下するため、混雑率を下げるためにあえて座席定員を減らしているのが現実である。これは混雑率の低下を政策目標に据えることの必然であるが、利用者の視点に立つと理不尽にさえ思われるのである。

これからは乗車率の正確な測定方法の確立と旅客定員の算定方法の厳密化が求められる。が、それだけではなく、あらたに利用者の満足度を表す指標を開発する必要があるだろう。


※1 混雑率の計算の基準となる標準定員は、オールクロスシートの場合は座席数を標準定員とするというルールがあるが、これは私鉄だけに適用されるので、逆にJR西日本の221系ほかの定員が標準定員と乖離してしまった。
※2
3扉セミクロスシートの113系の定員が120人余りなので、同じく3扉であるがオールクロスシートの221系などの混雑率の計算では、少なくとも1両当たり120人を上回るべきではない。
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