大戸屋、経営陣の提案に創業家が示す「答え」 功労金の支払い額で両者に溝、新たな火種に

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今回、現経営陣は創業家に対して、金額はさておき、功労金は支給するという回答を示したことになる。

会社側はこのタイミングで功労金支給を決めた理由を、昨年秋に実施した社内アンケートで、社員の96%が「久実氏が掲げた経営理念は今後の大戸屋にとっても大変重要だ」と回答していたことがわかったためだと説明する。

取締役管理本部長の土橋久一氏は、「前会長の功労・功績に対しほぼ社員全員が尊敬の念を持っている。功労金については昨年4月の取締役会で今年(2017年)の株主総会に上程するという方向性で決議した。1年かけて悩んできたが、社員の心情も考えて決定した」という。

創業家は「残念だ」と表明

現社長の窪田健一氏は亡くなった久実の従兄弟にあたる(記者撮影)

久実氏の存命中に役員退職慰労金制度は廃止されているため、特例の意味合いを込めて「創業者功労金」とした。

その金額の算定根拠について、会社側は「他社の事例、財務状況、税務リスクに基づき検討した結果、功労金に充てられるのが2億円程度だった」と説明している。

功労金と別に支給する弔慰金1000万円は、会社規定に基づき、久実氏の月額報酬355万円の3カ月分を支給することにした。両者あわせた合計2億1000万円は、6月28日に開く株主総会で承認を得てから遺族に支給し、今2018年3月期に特別損失として計上する。

ただ、この功労金の支給については会社側が決めたもので、創業家への事前連絡はなかった。会社側代理人の小松正和弁護士は「特定の株主への利益供与になるので、功労金の額については創業家の希望は聞いたが、交渉は一切していない」と説明する。

対立の当事者である創業家側はどう反応するのか。三森智仁氏は東洋経済の取材に対して「当初聞いていた額(8億円超)とは大きな乖離があり残念だ」とコメントした。

創業家側は、相続税を支払うため、相続した株式を担保に銀行融資を受けている。その返済には2億円では足りないため、株式を売却せざるを得ないという。

「交渉はこれからだが、株式をほしいと言ってくれている相手に一部もしくは全部を売却することを考えている。同業他社かファンドも選択肢の1つ」(智仁氏)

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