日本企業が「さほど儲けられない」真の理由 利益率の低さが経済成長を阻害する

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ところが、アップルは自社工場を持たないものの、自前の販売店Apple Storeを充実させ、OSも独自開発。「iTune」のような配信サービスも充実している。特許類も数多く持っている。

自社工場は持たないものの、生産を委託する台湾などの工場には、最新鋭の設備をアップルが自ら提供して貸与。きちんとリスクを取って、儲けが出る仕組みを作っている。そこには長期の利益戦略があると言って良いだろう。

日本企業に不足しているのは、自社工場の維持管理だけにとらわれて、景気の良い時代に一括採用した大量の従業員をどう食べさせていくかにとらわれ過ぎてきたことだ。こうした事例は、自社工場を持たないユニクロの成功でも理解できるはずだ。

高度経済成長時代、日本企業は何でも自前で構築し成功した。しかし、時代の変化とともに、アウトソーシングできるものは外部に移した。唯一、新卒で大量に採用した従業員が残る工場や店舗には固執せざるをえなくなった。日本企業の利益率を悪化させている原因のひとつと言える。

いずれは少子化、人口減の衝撃が日本企業を追い詰める

現在、日本企業のROEはやっと8%台を回復したところに位置する。日本経済が元気になるためには、どうしても海外の投資家が日本に投資する必要がある。中国が短期間で、米国に次ぐ経済大国になれたのも、海外の投資家が中国企業に投資してくれたからだ。

日本企業が、今後、高い利益を達成するためには、どうすればいいのか。方法はそれぞれだろうが、やはり利益率を上げていく方法を模索し、経営陣を外部や海外から招くなどの方法を採用するしかないだろう。日本の伝統的な経営戦略を根底からひっくり返すぐらいのパワーがないといずれは少子化、人口減の流れに飲み込まれる。ROEを上昇させれば、海外の投資家も日本企業に投資してくれるはずだ。

日本企業が、少子化、人口減という構造的な問題に直面しつつある現在、結局は海外に出ていくしか生き残れない。いつまでも、日本的経営にこだわっていたのでは、その末路は明らかだ。

日産自動車がカルロス・ゴーン氏を社長にしたことで生き残った方法はいまでも有効だ。そういう意味では、東芝が現在のままで何とか生き残りをかけている方法には疑問が残る。少子化、人口減の衝撃は、日本国内のすべての企業にサバイバル戦略を強いることになる。そう時間は残されていないはずだ。

岩崎 博充 経済ジャーナリスト

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いわさき ひろみつ / Hiromitsu Iwasaki

雑誌編集者等を経て1982年に独立し、経済、金融などのジャンルに特化したフリーのライター集団「ライトルーム」を設立。雑誌、新聞、単行本などで執筆活動を行うほか、テレビ、ラジオ等のコメンテーターとしても活動している。『老後破綻 改訂版』(廣済堂出版)、『日本人が知らなかったリスクマネー入門』(翔泳社)、『「老後」プアから身をかわす 50歳でも間に合う女の老後サバイバルマネープラン! 』(主婦の友インフォス情報社)など著書多数。
 

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