日本企業が「さほど儲けられない」真の理由 利益率の低さが経済成長を阻害する

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日本企業の利益率が、先進国などと比較して低いことはよく知られている。利益率と一言で言ってもいろいろだが、最も一般的な指標として「自己資本利益率(ROE)」が使われる。企業が株主などから集めた資本によって、どれだけ利益を稼ぎ出すことができるか。株式投資の指標としても重視される。

このROEだが、日本企業全体で2017年3月期に8.3%と3年ぶりに上昇する見通しだと最近になって報道された。前年度比0.5%増と伸びた背景には、円高や企業が自社株買いなどを通じて自己資本を減らしたことが要因になっているが、それでも欧米諸国と比較すると、日本企業のROEは依然として低いままだ。

ROEの低さには政府も注目していて、ROEを高めることで日本経済の持続的な成長と競争力の強化を提言した経済産業省の「伊藤レポート」は、発表された2014年当時、大いに注目された。その結果、数多くの企業がとりあえずROEの数値を高めようと、自社株の購入による資本政策、そして定番の人件費削減などによって、ROEは一時的に高まりを見せているのかもしれない。その伊藤レポートで示されたROEの国際比較データは、次のようになっている(全産業)。

・米国……22.6%

・欧州……15.0%

・日本……5.3%

問題は、なぜ日本企業のROEが低いのかだが、アナリストなどの分析などで報道されているのをまとめると次のような理由が考えられる。

新規参入する企業には厳しい規制が立ちはだかる

1.政府による多種多様な規制で自由なビジネスが阻害されている

この項目を真っ先に挙げなければならないところに日本の残念なところがあるが、日本には現在でも欧米先進国と比較するとさまざまな規制がはびこっている。法文化されているものから、目に見えないあうんの呼吸で規制されているものなど、いちいち挙げたらきりはないが、少なくとも新規に参入してくる企業に対しては厳しいものがある。

たとえば、新入社員の自殺という痛ましい事件で注目された「電通」の労務管理。過労死や過重労働の問題が大きくクローズアップされたきっかけとなったが、なぜこのタイミングなのか……。なぜ、急にサービス残業や過重労働が厳格化されたのか、よく見えない。

裁判で画期的な判決が出たわけではなく、法改正があったわけでもない。メディアが大騒ぎした結果、政府のさじ加減一つで、企業の労務管理が根底から見直しを迫られている。一部の官僚や公務員によって法律の解釈を厳格化し、そこに政治家の思惑も加わって残業時間の制限などの動きが加速された。一部の官僚が「自分たちに責任が及ぶのをおそれた結果、法解釈の厳格化を適用した」のではないのか、と疑いたくなるような動きだ。

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