結局、日本人は努力の総量が足りない 伊藤穰一×波頭亮 (下)

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波頭 学生に「これからはどんな人材が求められるか」と問われたときに、希少性と有用性という言葉をよく使います。どれだけレアであるか、どれだけ役に立つか、希少性、有用性を徹底的に磨けとアドバイスしています。そのとき、友達のなかでいちばん、大学のなかでいちばんでは意味がない。これに関しては日本中で誰にも負けないというくらいに徹底的に磨くことが重要です。

私がマッキンゼーに入ったとき、上司から「自分のレポートは、そのテーマに関しては世界でいちばんと胸を張れるくらいクオリティを上げろ」と言われました。それくらい徹底的にやって、やっと本当に一流の仕事になる。オリジナリティというのはそういうものだというふうに心得ておいてほしい。

伊藤 ニッチを探すというのも大切なことですよね。たくさん人がいるところで勝負することはない。

波頭 おっしゃるとおり。その上で、誤解のないようにもう1つ言っておきたいのは、オリジナリティとは、ただ変わっているということとはまったく違うということです。何でもよいから人と違うことを言ったり、斜に構えたりすることがオリジナリティではありません。

オリジナリティには水平軸と垂直軸があります。水平に変わっているだけなら、ただ人とは変わっているというだけで大した価値はありません。そこに垂直軸、つまり深みやクオリティの高さがあって初めて有用なオリジナリティといえるのです。ここを履き違えて、ただ単に変わっていればいいと思っている人もしばしば見かけます。

つまり、本物のオリジナリティを発揮するには、希少性と有用性を上げていくための努力の総量を徹底的に高めていかなければならないということです。Joiが世界で高い評価を得ているのも、インターネット黎明期からネットの可能性に目を向け、この分野を徹底的に追求したからこそですよね。

本日はどうもありがとうございました。さらなるご活躍を期待しています。

伊藤 こちらこそ、どうもありがとうございました。少しでも読者の方々の参考になれば幸いです。

 

 

 

 

 

波頭 亮 経営コンサルタント

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はとう りょう

1957年生まれ。東京大学経済学部経済学科卒業。82年マッキンゼー・アンド・カンパニー入社。88年コンサルティング会社XEEDを設立。幅広い分野における戦略系コンサルティングの第一人者として活躍を続ける。また、明快で斬新なヴィジョンを提起するソシオエコノミストとしても注目されている。著書に『成熟日本への進路』『プロフェッショナル原論』(いずれもちくま新書)、『リーダーシップ構造論』『戦略策定概論』『組織設計概論』(いずれも産能大学出版部)、『日本人の精神と資本主義の倫理』(茂木健一郎氏との共著、幻冬舎新書)、『プロフェッショナルコンサルティング』(冨山和彦氏との共著、東洋経済新報社)などがある。

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