結局、日本人は努力の総量が足りない

伊藤穰一×波頭亮 (下)

伊藤 ディベートの仕方を知らないということもあるでしょうね。メディアラボはMITの建築学科の下にあるので、どんな研究も実際に「モノ」をつくるんですよ。議論は、つくられたモノに対する評価が中心となるので、比較的客観的なものになりやすい。エゴから離れたところで、建設的な議論ができるんです。しかし、概念だけの議論は、相手へのアタックになりやすいから、感情的な対立になってしまうのでしょう。

波頭 なるほど。概念の戦いでは、価値観や美意識など人間のコアの部分の良し悪しを評価することになりやすいから、そうなると譲れなくなってしまう。異なること、多様であることの必要性や、ディベートのスキルを日本人はもっと学ぶ必要があるでしょうね。

牛に乗りながら、馬を探せ

波頭 オリジナリティとチャレンジが、もう少し日本の国民性として1人ひとりの価値観の背骨にインストールされないと、グローバル社会、ネット社会でいいものを生み出すことは難しいと思うのですが、次代を担う『Think!』の読者にアドバイスをお願いします。

伊藤 人とは違うバリューを身につけることだと思いますね。人と同じルールで競争するのではなくて、自分のルールで勝負できるようなゲームをすること。40代になると子どももできてリスクをとれなくなる人が多くなりますが、30代ならまだ1~2回はリスクをとることができるはずです。

波頭 世に出て評価を受けたいなら、30代までに勝負を仕掛けてみろと。

伊藤 そういうことです。そのとき、プランA、プランB、さらにプランZを持っておくことが大切なんです。プランAというのは今やっている仕事、プランBは夢、つまり自分が本当にやりたいことです。日常の仕事をこなしながら勉強を重ね、プランBにリアリティが出てきたら、それに乗り換える。そのために、余暇は酒を飲んで終わるのではなくて、自分のバリューを磨いたり、勉強して知識やスキルを磨いておくことが重要になってきます。ただ、そうは言っても、プランBに乗り換えて失敗することもある。そのときに帰れる場所であるプランZを用意しておくことも忘れてはいけません。

中国に「牛に乗りながら、馬を探す」という諺がありますが、常に馬を探していることが大事です。駄目なのは、牛に乗りながら、ただぼやいているヤツ、あるいは馬も見つかっていないのに、後先考えずに牛から降りてしまうヤツです(笑)。

それから、プランZを用意しておくことは重要ですが、あまりに細かい計画は逆効果を生むことも付け加えておきましょう。計画を綿密に立てると偶然性(セレンディピティ)を排除することになります。偶然性のないところにはラッキーもチャンスも生まれません。そうではなく偶然性のなかからチャンスをキャッチすることが大切なのです。

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