iPhone失速?「販売台数減少」はヤバいのか 注目すべきは売上金額と平均販売価格だ

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もちろん、価格が高くなる分、保存容量は大きくなるが、同じ保存容量であれば、特別色ではないモデルと価格も同じだ。しかし、「その色が欲しいから」という理由が、平均販売価格上昇の戦略を助けることになる。

そうした視点で、初代iPhoneからちょうど10周年に当たる2017年に発表されるiPhoneについて考えてみると、アップルは「特別だから」という理由だけで、無闇に販売価格を高く設定することもしないだろうと考えられる。たとえば、iPhone7 Plus 256GBモデルと同じ、969ドルという価格で、256GBのストレージを備えて登場する、というのは妥当な線だ。

アップルはサムスン電子に7000万台の有機ELパネルをオーダーしたと言われている。通常のiPhone7 32GBモデルよりも320ドルも販売価格が高い特別なiPhoneが、1年間もしくはそれよりも短い期間に7000万台販売されると考えると、iPhone成長への楽観視にもうなずけるのではないだろうか。

iPhone関連ビジネスの成長も加速中

アップルは、販売台数が伸び悩むハイエンドスマートフォン市場の成熟に対して、iPhoneの平均販売価格上昇以外の施策も成功しつつある。それは、サービス部門とその他の製品だ。

サービス部門には、iCloudの追加容量や、Apple Musicの定期購読などのサブスクリプションサービスや、App Storeの売り上げが含まれる。この部門だけで70億ドル(約7843億円)の売り上げを達成しており、Fortune 100企業(米フォーチュン誌による、全米上位100社)の売り上げと同等の規模になったと指摘する。

App Storeは前年比40%の売上増で、過去最高の成長を記録しており、1アカウント当たりの売り上げや、有料サービスを利用するアカウント数も2ケタ成長を続けていると指摘している。また、Apple MusicとiCloud追加ストレージの売り上げは1億6500ドルに達しており、こちらも2ケタ成長だった。

これらのサービスは、iPhoneユーザーが日々iPhoneを利用するうえで得られる売り上げであり、2020年までに倍増させる計画だ。

加えて、そのほかの製品とは、スマートウォッチ、Apple Watchと、ワイヤレスヘッドフォン「AirPods」やBeats製品。こちらの売上高は約29億ドルで、Fortune 500企業の規模に成長したという。Apple Watchは前年同期比で2倍の売り上げとなり、AirPodsは需要に供給が追いついていない状態が続いている。

これらの製品についても、iPhoneユーザーのための製品を取り揃えていることで成長を続けており、2017年も新しい製品の投入が期待できるカテゴリだ。

アップルのiPhoneに集中するビジネスモデルは、非常に成功している。それだけに、販売台数の減少速度が平均販売価格の上昇よりも速くなるタイミングまでに、サービスとそのほかの製品の規模が十分拡大していくかどうかが重要になってくる。

しかし、それはさほど近くない将来の話、ということになるだろう。

松村 太郎 ジャーナリスト

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まつむら たろう / Taro Matsumura

1980年生まれ。慶應義塾大学政策・メディア研究科卒。慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)、キャスタリア株式会社取締役研究責任者、ビジネス・ブレークスルー大学講師。著書に『LinkedInスタートブック』(日経BP)、『スマートフォン新時代』(NTT出版)、監訳に『「ソーシャルラーニング」入門』(日経BP)など。

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