日本郵政の「大型M&A」、失敗は必然だった 「手段が目的化」するリスクは結婚と同じだ

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M&Aによる成長は両刃の剣の要素もはらむ(撮影:今井 康一)

日本郵政が昨年度(2017年3月期)決算で400億円の純損失を計上する見通しになった。4月25日、オーストラリア子会社であるトール・ホールディングスへの投資に関し4000億円という巨額の減損を計上。10年前の会社設立以来初の赤字計上となる。

いま何かと存続の危機について報道が続いている東芝も、米国の原子力事業子会社ウエスチングハウスが買収した子会社の「のれん」減損で東芝本体の財務状況が悪化し、虎の子の医療機器会社を売却し、半導体事業の分社化をも余儀なくされている。皮肉なことに、この医療機器会社を買収したキヤノンは先日の決算発表で、買収効果により営業利益が倍増したと発表している。

このほかにも日本企業が買収した海外子会社に関する“のれん”の減損は、キリンホールディングスが買収したブラジルのビール会社スキンカリオールが1100億円であったり、楽天が買収した動画配信関連の海外子会社で243億円の減損を計上したり、ポーラ・オルビスHDが豪州子会社ジュリークを95億円の減損をしたりと、海外企業へのM&Aが増えるにつれ失敗事例も多く目にするようになった。

また、「小が大を飲み込んだ」という触れ込みで、2006年に日本板硝子が買収した英国ピルキントンは、思った以上の収益を上げることができず、「のれん」の償却で財務体質が悪化してしまい、今年3月末に再生ファンドが400億円もの増資を引き受けることとなってしまった。

日本郵政のトール社買収

なぜ、日本企業の海外企業買収がうまくいかず、「のれん」の減損が生まれてしまうのか。日本郵政によるトール社の買収から考えてみたい。

まず、減損された「のれん」が会計上の概念であることから、一般の方には少しわかりにくい部分があるかと思うので、理解を深めていただくために簡略化してお伝えしたい。

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