EU、選挙リスクよりECBのジレンマが深刻に

理事会は分裂へ、迫る政策遂行の行き詰まり

ECBの金融政策への中長期的な影響を検討するにあたっては、こうした目先の経済指標以外にも注目すべきものがある。

OECD(経済協力開発機構)の推計するデフレギャップ(GDPギャップ)に関し、ドイツ、フランス、イタリア、スペインの4カ国の推移を見比べてみよう。ドイツは2014年以降、デフレギャップが解消しており、プラス圏で徐々に拡大中である。依然、マイナス圏での推移を余儀なくされている3カ国と比較すれば、彼我の差は依然大きいと言わざるをえない。なお、イタリアやスペインはマイナス圏ながらもこれを縮小する動きが見られるが、フランスに至ってはデフレギャップが緩やかに拡大した後、これが横ばいになるような状況であり、特に心配な雰囲気がある。こうしたユーロ圏加盟国間の「デフレギャップの格差」は2011年以降、顕著に拡大し始めているが、そうした現象自体、ユーロ導入後の最初の10年間では見られなかったものであることは重要である。

徐々に近づく、ECBの真の苦境

このようなデフレギャップに見る「地力の差」は、経済の体温である賃金・物価の押し上げに、いずれつながってくるはずであり、それが顕在化した時にECBは真の苦境を迎えることになろう。現状のユーロ圏労働コストを見ると、2014年以降、すでにドイツの動きは頭ひとつ抜け出ている。こうした労働コストへの波及はECBが伝統的に政策変更のキーフレーズとして使用してきた「2次的波及効果(second-round effect)」を象徴する動きであり、「次の一手」を読むうえでは極めて重要な材料となる。

次ページドイツにとり不本意な金融政策が続く
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