EU、選挙リスクよりECBのジレンマが深刻に

理事会は分裂へ、迫る政策遂行の行き詰まり

重要なことは、これほどの発言が自国高官から出てしまうほど、ドイツ政府はユーロ相場の水準に関して「危うい」との認識を持っているという事実である。バイトマン総裁やザビーネ・ラウテンシュレーガーECB理事といったドイツ出身の理事会メンバーが安易な緩和に反対するのはECBの健全性というよりも、自国経済への危機感のほうが強いと思われる。ECBの「次の一手」を読むにあたっては、このあたりの論点をしっかり抑えておかねばならない。

デフレギャップの格差拡大はユーロ導入後初めて

ちなみにドイツと周縁国の格差を推し量るうえでは、どのような指標を見ればよいのか。たとえば、上述した為替政策報告書では2016年の実質GDP成長率に関し、ユーロ圏のプラス1.7%に対し、スペイン(プラス3.2%)やドイツ(プラス1.9%)が上回っていた一方、フランス(プラス1.2%)やイタリア(プラス0.9%)が下回っていたことが指摘されている。

そのほかでは失業率などを見れば、格差はより顕著につかめる。2014年から2016年の平均で見た場合、ユーロ圏は10.8%であるのに対し、ドイツは4.6%と突出して低く、完全雇用に到達しているとの声もある。一方、フランスやイタリアは10%を超えており、スペインやギリシャに至っては20%を超えている。

こうした状況に対して1本の金融政策しか使えないことが無理筋であることに関し、多くの説明は要しないだろう。

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