痴漢の疑いで「線路に逃走」がダメな法的理由 犯人でなくても逃げると逮捕の可能性がある

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さらには、逮捕後の勾留決定(10~20日の身柄拘束)がされやすくなる事情にもなる。勾留をする要件の1つに「逃亡しまたは逃亡をすると疑うに足りる相当な理由がある」というものがあるが(刑事訴訟法第207条第1項、第60条第1項第3号)、現場から無理に逃げたという事情があれば、これに該当すると認められる可能性があるからである。

その一方で、現行犯逮捕が問題となるような状況にあっても、明らかにこの人が犯人という場合でなければ逮捕されるべきではない。令状なしで逮捕できる現行犯逮捕は、真犯人が目の前にいて急速の処理が求められるゆえの例外的な逮捕であるからである。そして現行犯逮捕においても不必要な逮捕は許されないというのが一般的である。

したがって、痴漢を疑われた現場では、「自分は犯人ではない」ということを関係者にアピールし、かつ、身元を明らかにして逃亡する意思がないことを客観的に示し、目撃者確保もしつつ、証拠隠滅の可能性もないとして「逮捕の必要性がない」ということも訴えるべきであろう。逮捕するなら後々問題にするぞということもアピールすることが必要である。

「犯人性」に疑いを持たせ、逮捕が不要であることをアピールすることで、現行犯逮捕を躊躇させ、あるいは後日の通常逮捕も回避するということにつながりうる。

「犯人性」なくても逮捕されたら…

そうはいっても「言うは易く行うは難し」ではある。身元を告げることも勇気がいるであろう。しかし、そのまま何もしなければ状況は悪化するだけである。このような対応は最低限身を守る行為として必要である。

そして犯人性の否定と逮捕の不必要性を訴えても不幸にして逮捕されてしまった場合には、弁護士に即時に連絡すべきである(弁護士会を通じて当番弁護士に面会を求めることもできる)。

くれぐれも無理に逃げて、さらにいろいろな危険や責任を背負い込むことのないように注意していただきたいものである。

小島 好己 翠光法律事務所弁護士

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こじま よしき / Yoshiki Kojima

1971年生まれ。1994年早稲田大学法学部卒業。2000年東京弁護士会登録。幼少のころから現在まで鉄道と広島カープに熱狂する毎日を送る。現在、弁護士の本業の傍ら、一般社団法人交通環境整備ネットワーク監事のほか、弁護士、検事、裁判官等で構成する法曹レールファンクラブの企画担当車掌を務める。

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