超優良「東芝メディカル」社長が明かした今後 キヤノン傘下で医療機器の世界大手になるか

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そこで瀧口社長は、今後の成長に期待するものとして3つを挙げる。

まずは、MRIだ。画像診断装置の中でも、とりわけ期待を込める。調査会社マーケッツ・アンド・マーケッツによれば、東芝メディカルのMRI世界シェアは11.1%と、先述のビッグ3に大きく水をあけられている。「ハードウエアやソフトウエアを作り上げるだけではなく、臨床の現場で医師と一緒になって開発する枠組みが必要。これが世界各地で立ち上がりつつある」(瀧口社長)。

2つ目はITの活用。米国では医療データを病院間で共有することで、医師の診断などに役立てる動きがある。競合他社もクラウドをベースにした医療サービスを加速させている。東芝メディカルとしては、同じグループとなったキヤノンマーケティングジャパンが持つデータセンターなどのITインフラを活用したい考えだ。

体の「外」だけではなく、「内」へ

そして3つ目がバイオメディカル分野の強化だ。これまでは画像診断用の「機械」を製造販売し、体の「外」から医療情報を取る手段を提供していた。だが医学の進歩により、血液など体の「内」からの情報による診断が可能になってきた。

東芝メディカルは現在、エボラ出血熱やジカ熱の検査、インフルエンザの早期発見につながる血液検査に使われる器具などを手がけているが、「この分野でわれわれがやっていることはまだ小さい。5~10年単位で大きな夢を描きながら研究開発を進めたい」(瀧口社長)。また、キヤノンも2015年、米国子会社「キヤノンバイオメディカル」を設立し、遺伝子検査を中心とした事業を立ち上げつつある。

キヤノンの傘下に入り、可能性が広がりつつある東芝メディカル。社名は2018年に「キヤノンメディカルシステムズ」に変更される予定だが、医療機器の規制の関係上、時間がかかる見込みだ。

従来から安定的な成長を続けてはきたが、世界3強の背中に近づくためには、キヤノンの後押しをうまく力に変えられるかがカギとなる。

遠山 綾乃 東洋経済 記者

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とおやま あやの / Ayano Toyama

東京外国語大学フランス語専攻卒。在学中に仏ボルドー政治学院へ留学。精密機器、電子部品、医療機器、コンビニ、外食業界を経て、ベアリングなど機械業界を担当。趣味はミュージカル観劇。

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