電通と博報堂はいったい何をしているのか 超エリート集団の実態とは

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──ご自身はアマゾンの日本上陸時に博報堂を退職しましたね。

入社して3年半のときにアマゾンの日本上陸の仕事が始まって、アマゾン・ドット・コムの業務を手掛け、その間半年、「自分が好きでもないクライアントのおっさんを出世させることが広告代理店のサラリーマンの本質」とわかって辞めた。今のヤマト運輸みたいなものだ。アマゾンは餌をちらつかせながら人を酷使する。

「客は神様だ」の発想にとらわれすぎている

電通と博報堂は何をしているのか (星海社新書)
『電通と博報堂は何をしているのか』 (星海社新書)(講談社)。書影をクリックするとアマゾンにジャンプします

──広告業界の残業時間は特に長い?

日本社会全体の問題だ。「客は神様だ」の発想にとらわれすぎている。電通や博報堂はその客のために90点以上をつねに取ろうとする。そこをやめれば過重労働は終わるかもしれない。過労状況を変化させる突破口は、目立つ業界が変わることだ。

──楽しい仕事がいっぱいできるイメージがありますが。

デジタルでは電通もそこまで強くない。まだ勉強しながらやっているから、勤務時間も長くなるし、ワールドカップやオリンピックあるいはテレビでは尊敬されても、デジタルではなめられている。確かに専門代理店のほうがデジタル広告には強い。新興の専門業者がのしてきて、既存の代理店も人材を育てようとしている。デジタルの特徴はいつでも直せることだから、仕事に追われ続け、なかなか終わりがない。

──五輪エンブレムでは博報堂が話題になりました。

あの問題はエリートと非エリートの闘いだった。渦中の人物は最高峰クラスの美術大学出身。それらの大学から毎年、数名しか行かない広告代理店に入った。この時点で相当の勝ち組。さらにその社内で優秀な師匠について、自分も大きい仕事をたくさん手掛け、フリーになって大金を稼いだ。このサクセスモデルをネット民が潰したかったのだ。博報堂を大方の接点にしてストーリーを紡いだ。ネット雑談の醍醐味を使ってどうやって引きずり下ろすか。ウェブ上の炎上がすごかった。

──電通、博報堂は特権階級?

実際には生活者の発想、一般の目線などない。広告を出せる会社はみな浮き世離れしている。それこそ、広告代理店が付き合うのは世間の上位何%かの金持ち。そういうところばかり相手にし、自分たちは全員が大卒。一般の目線とは、世の中の大多数を占める年収300万円以下の人たちを意味する。ただ、どうしようもない「人物」も多いものの、案外と汚職や談合的なものもなく、ビジネススタイルはそこまで汚れていない。

塚田 紀史 東洋経済 記者

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つかだ のりふみ / Norifumi Tsukada

電気機器、金属製品などの業界を担当

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