ルペンvsマクロン、迫る仏大統領選の読み方 中産階級の崩壊で既成政党は見放される

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極右政権誕生か、トランプ現象かと、比較されるルペンも、今や単純な極右というレッテルで考えることはできない。なぜなら、ブレーンに国立行政学院(ENA)卒のフロリアン・フィリポを入れ、父親時代の国民戦線のイメージを払拭したからである。

反ユダヤ主義・親ナチスといった悪しきイメージを拭い去り、人民を救う政党として、貧困問題を解決するといった社会党のお株を奪う戦略に出た。崩壊した中産階級層は国民戦線を支持するようになったのだ。社会党の基盤であった工業地帯の労働者層がそのままルペンに回る可能性もある。もちろん、思想や性格において、あれほど父の生き写しといわれたルペンが、父ジャン=マリーから本当に離れたといえるかどうかは疑問。ここに彼女への支持が今ひとつ伸びない原因がある。

”第1次選挙の2番手”が勝つ?

こう見ると、大統領の可能性は、社会党から出ていったマクロンとメランションの2人に限られるのかもしれない。崩壊した中産階級としての労働者を社会党が吸収できないとすれば、それができるのは、左においてはメランションしかいない。が、EUに距離を置くといった保護主義政策を掲げるメランションは、国民戦線と似ているともいえる。だからこそ、現状維持を主張する人々は、メランションの当選を恐れるのである。

結果として、崩壊した中産階級は、選挙で分裂した投票を行うだろう。そして漁夫の利を得るのは、無党派の候補マクロンかもしれない。マクロンは、オランド政権の自由化政策の旗振り役だったのだが、オランドの優柔不断から飛び出した人物だった。新自由主義的政策を掲げるマクロンはオランド以上に右派だ。しかしながらマクロンは、まだ30代後半で若い。スキャンダルの可能性もなく、未来への希望を象徴することができる存在である。「イケイケどんどん」という怖いもの知らずに不安があるものの、既存の支配勢力は、フィヨンがだめなら無色のマクロンに相乗りしよう、という戦略を持っている。

今回の大統領選では、既成政党ではない候補がなるしかない。しかもその候補は、急激な変化を避けるべく、EU継続を支持する者でなければならないこと、そして過去の汚れを知らないものであることだ。こうしたことから消去法で引いていけば、行き着く先はマクロンだけになる。

第1次選挙でルペンの2番手にマクロンがつければ、そのまま第2次選挙では当選ということになろう。第1次選挙の2番手がフィヨンであればフィヨン、メランションであればメランション、結局、”第1次選挙の2番手”が勝つという構図なのかもしれない。そうなるとマクロンが有利であり、マクロンがオランドの隠し玉であるとすれば、フランス国民はこの死に体の大統領のしたたかさに、またしてもやられることになるのだ。

的場 昭弘 神奈川大学 名誉教授

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まとば・あきひろ / Akihiro Matoba

1952年宮崎県生まれ。慶應義塾大学大学院経済学研究科博士課程修了、経済学博士。日本を代表するマルクス研究者。著書に『超訳「資本論」』全3巻(祥伝社新書)、『一週間de資本論』(NHK出版)、『マルクスだったらこう考える』『ネオ共産主義論』(以上光文社新書)、『未完のマルクス』(平凡社)、『マルクスに誘われて』『未来のプルードン』(以上亜紀書房)、『資本主義全史』(SB新書)。訳書にカール・マルクス『新訳 共産党宣言』(作品社)、ジャック・アタリ『世界精神マルクス』(藤原書店)、『希望と絶望の世界史』、『「19世紀」でわかる世界史講義』『資本主義がわかる「20世紀」世界史』など多数。

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