ルペンvsマクロン、迫る仏大統領選の読み方 中産階級の崩壊で既成政党は見放される
フランスでは今月、5年に1度の大統領選が行われる。GDP(国内総生産)では日本の後塵を拝するフランスであるが、イギリス、アメリカと並んで、世界で最も影響力のある国でもある。”フランス本国以外のフランス”が世界中に点在すること、さらにフランス語圏の大きさ、フランス料理・芸術・文化・学問の影響力を含めると、グローバル化の中心であるアングロ=サクソン文化圏に抵抗しうる、唯一の国であるといっても過言ではない。フランスの大統領はその意味でも大きな意味を持つのだが、今ひとつ日本では関心が薄い。
とはいえ、フランスでもある意味、関心が薄れている。現段階では主要候補者として5人が名乗りを上げている。極右とされる国民戦線のマリーヌ・ルペン(48)、中道右派・共和党のフランソワ・フィヨン(63)、中道・前進!のエマニュエル・マクロン(39)、左派・社会党のブノワ・アモン(49)、極左とされる左翼党のジャン=リュック・メランション(65)だ。
だが実際、誰に投票していいかわからないという人々が、今のところ40%を占めており、投票率が大幅に下がる可能性もある。少なくとも5年前の大統領選挙の際には熱狂があった。ニコラ・サルコジ大統領に不満をもった人々が社会党のフランソワ・オランドを大統領として熱狂的に支持したからである。しかし、大統領のスキャンダル、内閣の内紛、非社会党的政策(見方によるが)の出現などによって、大統領はいつの間にか多くの支持を失ってしまった。その後、人々は右派の共和党にも、左派の社会党にも、もはや信頼をもつことができなくなってしまったのである。
二大政党の前提は安定した中産階級だった
もちろん、このことは何も、フランスのみに当てはまる問題ではない。イギリスの欧州連合(EU)離脱、アメリカのドナルド・トランプ大統領当選など、いずこを見ても、既存の政党のいずれにも期待しない人々が今、どんどん増えている。それはなぜなのか。その根本にあるのが、これまでの政党政治を支えてきた基盤である、中産階級の崩壊という現象だ。少なくとも二大政党政治が機能する前提は、安定した党の支持基盤を持つことである。
安定した支持基盤は、安定した中産階級の存在によるところが大きい。労働者、農民、小規模経営者、プレカリアート(非正規雇用者や失業者)など、さまざまな利害の対立は、小規模政党の乱立を生み出す。こうした層が、すべからく中産階級(言い換えれば市民)という、ひとつの幻想によって統一されることによって、二大政党制は出現したといってよい。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら