日本では「期待に働きかける」政策は効かない 水野温氏元日銀審議委員に「政策課題」を聞く

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――出口を展望できないまま今の政策を続けていくと、どうなりますか。

まず、マイナス金利政策は時間の経過に伴い副作用が大きくなる。日本銀行の使命は「物価の安定」と「金融システムの安定」だが、後者についてはこのままの政策を続けていくと、金融機関は収益が稼げず、為替のリスクや期間のリスク、信用リスクなどさまざまなリスクを取った市場運用を増やすが、コストに見合った収益が得にくいため、金融面の不均衡がたまっていく。

また、国民の間にも低金利が長期化し、将来は金利がマイナスになるかもしれないという不安をかえってあおってしまった。さらに、財政規律を弛緩させてしまったという問題もある。国会議員の中には国債発行コストは低いのだから、もっと財政拡張策をすべきだという議論をする人たちが増えている。

安倍政権は金融政策から財政政策へシフト

――安倍政権周辺ではアメリカの経済学者の理論をもてはやす傾向があります。金融政策が功を奏しない中で、昨年はヘリコプターマネー政策、最近はシムズ理論などノーベル賞受賞学者の財政拡張策も取りざたされています。

米国のノーベル賞学者の人たちにはそんなによい政策なら自国でやってくださいと言いたい。「将来も増税をしない」という約束は、国民の財政規律を弛緩させ、消費を喚起しようとする政策なので、国民性が生真面目な日本では効かないのではないか。消費者の将来不安が強いので、企業もなかなか値上げができない。デフレ期待の払拭は容易でない。

安倍政権は昨年夏、「金融緩和に依存した円高是正の限界」を意識し、景気牽引役として財政政策・財政投融資を掲げた。安倍政権からみると、昨年9月21日の日本銀行による「総括的な検証」は日本銀行がアベノミクスのフロントランナーの役割を静かに降りるためのセットアップの位置づけと解釈できる。

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