日本では「期待に働きかける」政策は効かない

水野温氏元日銀審議委員に「政策課題」を聞く

黒田東彦総裁の次の5年はどうなるのか(撮影:今井康一)
FRB(米国連邦制度準備理事会)が利上げを進め、ECB(欧州中央銀行)も出口へ向けて動き出す中、日本銀行は3つの金融緩和の枠組みを組み合わせても2%のインフレ目標の達成は困難とみられている。なぜ、日銀は失敗しているのか、問題点を元日本銀行政策委員会・審議委員でクレディ・スイス証券取締役副会長の水野温氏さんに聞いた。

日銀は今の政策が有効と考える根拠を説明せず

――FRBは3月に3度目の利上げを行い、出口政策を進めています。ECBのドラギ総裁も、デフレに陥るリスクはなくなってきたということで、金融緩和政策を縮小している。日本銀行だけが、出口が遠いという感じです。

黒田東彦日銀総裁が2013年4月から4年も量的・質的金融緩和を行ってきて、2%の物価安定の目標の達成ができなかった。そこでマイナス金利政策を2016年の2月に導入したが、副作用が大きく深掘り(マイナス幅の拡大)は難しい。それに今、国債発行額の4割ぐらいを日銀が保有しているが、2017年度は国債の市中発行額が減るので、買い入れのペースを落としていきたい。そこで、2016年9月にはイールドカーブ・コントロール(YCC)とオーバーシュート型コミットメントを導入した。

しかし、海外の金利が上昇していく中で10年国債金利の誘導目標ゼロ%を維持しようとすると、国債の買い入れ額を大幅に減らすことは難しいことがわかったというのが現在の状況だ。金利が上昇してきたら、国債買い入れの量を増やして抑え込むしかない。

そもそも、2%の物価目標がなぜYCCとオーバーコミットメントで達成できるのか、日銀は説得力のある根拠を示していない。米国が金利を上げていく中で、日本は金融緩和を継続していくといえば、それによって為替が安定する、円高にならないかもしれないという程度だろう。

(注)YCCは長短金利の誘導目標を決めて操作を行うもの。現在は長期金利の誘導目標をゼロ%にしている。「オーバーシュート型コミットメント」は消費者物価上昇率が安定的に2%を超えるまで、マネタリーベースの拡大方針を継続するというもの。
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