「シリア攻撃」に中国と北朝鮮が警戒する理由 米中首脳会談の直前に行われた意味はある?

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「『習主席と合意に至ったことは何もなかった』と告白したとき、トランプ大統領はとても正直だなと感じた」と、ジョージ・W・ブッシュ大統領時代の国家安全保障理事会の元アジア担当シニアディレクターで、戦略国際問題研究所(CSIS)の日本研究部長のマイケル・グリーン氏は話す。「経済と米中関係についてまったく異なる理論を持つライバル派閥がホワイトハウス内にいなければ、こんな告白はしなかったかもしれない。思うに、経済面は本当に何の進展もなかったのではないか」

シリア攻撃が米国の固い決意や、少なくとも予測不能さを示すことによって、習主席に対して何らかのインパクトを与えたのではないかという指摘もある。「シリアへの空爆は、米国でさえ困惑すれば危険なことをする可能性を覚えておかなければならない、という印象を中国側に与えたのではないか」とグリーン氏は見る。

シリア攻撃は習主席のフロリダ到着のタイミングを狙って、中国だけでなく、わからずやの北朝鮮政府の双方にメッセージを送ることを意図していたのではないか、と指摘する政治アナリストもいる。こうしたアナリストは、シリア攻撃によって習主席の注目を浴びたいという願望はしぼみ、シリアに対する中国政府の支援について再考するきっかけとなると主張する。

中国はシリアと利害関係ない

一方、中国をよく知る有識者たちはこうした考えを一蹴する。「これが習主席と中国にとって大きな問題になるとは思わない」と、中国や日本、東アジアでの勤務経験が長い国務省元高官はこう語る。

「米国との関係において、中国政府にはほかにもっと大事なことがある。遠い国(シリア)で起きていることは、中国にとって直接的利害がほとんどないので、米中関係を本質的に変える可能性は低い。中国はシリアに対する従来型の攻撃を評価する可能性すらある。なぜかというと、今回の攻撃は極めて限定的であると同時に、シリアの自業自得であり、米国が外交問題に再び関与する可能性が高まっていることがわかったからだ」

トランプ大統領によるシリア内戦の泥沼に再び足を踏み入れるという決断はまた、別の点でも中国に恩恵を与えている。「中国政府はシリア内戦にまったく関与していない。加えて、今のところ、トランプ大統領がロシアで頭がいっぱいになっていてもまったく問題がないようだ」と、ブルッキングス研究所の中国・韓国問題の有数の専門家、ジョナサン・ポラック氏は述べる。

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