ところがソニーの社史には、興和との関係があったとは描かれていない。ソニー社内にもそのような記録は残っていないようだ。ただし株式上場前の出資関係については記録に残っていないことも多いため、出資があった可能性は否定できないという。
社史には記されていないこと
なぜ記録に残っていないのか。それは両社の関係が突然、決裂したことと関係があるようだ。「盛田さんは、あろうことか興和の社員をごっそり引き抜いてしまった。私は抗議の手紙を書きましたが、盛田さんからはまともな返事がなかった。それで両社の関係が切れてしまった」。緑四郎さんは、まるで昨日のことのように怒りをあらわにしていた。
続けて、「こんな間違ったことをやる会社は、絶対に長続きしないと思った」とも。しかし、事件発生からすでに60年が経過しているが、ソニーはまだ存続している。しかも日本を代表するような巨大企業へと成長した。そこで「予想は外れましたね」と返したところ、「そんなことはない。今、ソニーはアップルなどにやられているでしょう。私の予想したとおりになっています」。
緑四郎さんは今も現役の経営者。孫世代の若手起業家への経営指導もしている。そこで伝えているのは、「欲で経営をしてはいけない」ということだ。「子どもの頃から善悪の判断ができるようになっていることが大切。善悪の判断ができないと経営者は失敗する」。
60年前のソニーのエピソードとDeNAを結び付けようというわけではない。昔も今も、創業期には人事をめぐるトラブルが起こりがちだということだ。しかし、得られる教訓はありそうだ。「どんなに忙しくても、貸してくれた人に対して直接、頭を下げて仁義を切りましょう。さもなければ恨まれますよ」。
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