政府・与党で沸き起こる「黒田続投論」の中身

中曽副総裁、丹呉元次官、伊藤隆敏氏も浮上

前途多難な政策運営が確実視される中、黒田総裁の続投を政権が判断する場合、1つのポイントは年齢になるかもしれない。今年10月に73歳となるが、G20(20カ国・地域)財務相・中銀総裁会議などの国際会議を数多くこなし、欧米の中銀総裁らと得意の英語で語り合える「コミュニケーション力」は抜群。

この先、5年間の体力に問題がなければ、再任の可能性が高まる可能性がある。歴代の日銀総裁で在任期間最長は、法王と言われた18代の一萬田尚登氏の8年6カ月。再任されれば、これを超えて歴代最長となる。

市場では、もし、交代となれば、YCCなどの精緻さを求められる金融政策運営を円滑に進める観点から、実務に精通した中曽宏副総裁や雨宮正佳理事ら日銀プロパーの昇格を期待する声がある。

一方、伝統的に日銀総裁人事の選定に深く関与している財務省では「安倍政権である限り財務省推薦者は総裁にならない。財務省がどれほど反対しても首相が本田悦朗・スイス大使を推す可能性も否定できない」との見方もある。

スーパーテールリスクなら激変

マーケットには海外勢の一部に「スーパーテールリスク」として、安倍首相退陣の可能性を意識する声も少数ながら存在する。

もし、「最高人事権者」である首相が交代すれば、日銀総裁人事の構図も「ガラリと変わらざるを得ない」(政府・与党関係者)という声が多い。

その場合、安定感を重視する立場からは財務省出身者を挙げる見方がある。丹呉泰健元次官(日本たばこ産業会長)、勝栄二郎元次官(インターネットイニシアティブ社長)は、有力候補に浮上する可能性がある。

また、現政権からの信認が高い金融庁の森信親長官を挙げる政府・与党関係者もいる。日銀OBでは、稲葉延雄・元日銀理事(リコー取締役会議長)や山口広秀元日銀副総裁(日興リサーチセンター理事長:訂正)の金融政策運営における経験を評価する見方が政府・与党内にあるほか、学識経験者として伊藤隆敏・米コロンビア大教授を挙げる声もある。

次期総裁はだれが就任するにせよ、かつてない規模に増大した日銀資産をどのようにコントロールしていくのかという大命題と直面する。

東短リサーチ・チーフエコノミスト、加藤出氏は「中央銀行が証券を買い続けることで、市場に委ねるべきアロケーションの機能を歪めてしまう問題が生じる」と指摘。「最も懸念されるのは金利機能が働くなくなり、低生産性のプロジェクトが存続し、新陳代謝が働きにくくなる」と述べとともに「当面は出口がない中で日銀のバランスシートがさらに膨らむことは避けられず、出口のリスクもその分、蓄積されている」と警鐘を鳴らす。

さらに加藤氏が懸念するのは「海外経済がリセッション入りした場合も、米連邦準備理事会(FRB)や欧州中央銀行(ECB)が緩和局面に転じた際、日銀は円高防止のためにさらなる緩和をしなければならなくなる。すでに手段は限られている中で、フォローの風が吹いているうちに正常化を進めないと、手の打ちようがなくなる可能性がある」と、今後の道のりの険しさを予想している。

(竹本能文 伊藤純夫 編集:田巻一彦)

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