パナソニック改革、成長ストーリーは本物か 自前主義から脱却、外部との連携に賭ける

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パナソニック歴史文化コミュニケーション室企画課の中西雅子課長は「松下は衆知を集めて共存共栄をしてきた歴史。高橋荒太郎氏や中川懐春氏など、要所要所で外部から重要な人が入ってきて、大きくなってきた」と話す。高橋氏は朝日乾電池から松下に移り、松下幸之助氏を支えた大番頭だ。フィリップスとの提携交渉では辣腕(らつわん)を振るい、会長まで上り詰めた。中川氏も冷蔵庫や洗濯機事業を成長させ、副社長にまでなった功労者だ。

松下幸之助氏は「衆知を集める経営」を重視していた。「衆知を集める」は社内だけでなく、社外にも当てはまる。「モノづくりの業態は、エレクトロニクスは特にそうだが、何らかのエッセンス、レシピだけを買収しても、人がついてこないとだめ」(宮部義幸専務)。

津賀社長が掲げる自前主義からの脱却、オープンイノベーションは松下の原点に戻るということでもある。

力を入れる車載事業は競争厳しい

しかし、こうした変化の一方で不安も残る。津賀社長が特に力を入れている車載事業は厳しい競争にさらされており、期待通りの収益が上がるかどうかは不透明だ。

2015年度に1.3兆円だった車載事業の売上高を2018年度に2兆円に引き上げる計画だが、自動車メーカーの部品メーカーへのコスト要求は「生かさず殺さず」と言われるほど厳しい。自動車の電子化は進んでも、車体価格への転嫁には限界があり、思ったほど利益が出ないリスクも付きまとう。

伊藤好生専務(現副社長)はロイターの取材に対し「2013年くらいから開発してきた成果が2017年度中に現れて、2018年度くらいから本格的に伸びていくというイメージだ」と先行きに自信を示した。津賀社長も「2兆円がピークではなく、目指すべきはその次の2.5兆円とか、そういうところに現場は目線を移しつつある」と述べ、2兆円はあくまで通過点に過ぎないと強調した。

だが、市場は種まきの成果がいつ表れるのか自信を持てずにいる。津賀社長は「2018年の2兆円に向けて9割の受注が進んでいる」と話すが、利益については明らかにしていない。

パナソニックは売上高10兆円の目標を掲げて、撤回に追い込まれた過去もある。市場では「車載やBtoBなどへの投資が中長期的な利益成長につながるか見極めたい」(国内証券アナリスト)との声が出ている。

(志田義寧 山崎牧子 編集:石田仁志)

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