「行き場のない手紙」を預かる郵便局長の思い 瀬戸内海・粟島の"漂流郵便局"を訪ねる
それから3年。約2万1750通が寄せられました。「今まで仏壇の前でブツブツ言うたり、日記に書くだけだった “どうしようもない気持ち” を手紙にして、投函すると、自分とこには戻ってこないじゃないですか。だから相手に届いたような気になるんでしょうね」
《こんな郵便局を作ってくれてありがとう》
そんな手紙がたくさん届くそうです。
人が手紙を書く理由
印象に残る手紙もいくつか読ませてもらったんですよ。例えば、こんなもの。
「この手紙の題名は “隣の芝生は青い”。久々に会った旧友への本音です」
久々の再会で “あんたはいいね” と、友人に皮肉めいた羨望を向けられた嘆き。《何でもかんでも言葉にすればいいってものでもないのです》という言葉に哀愁がにじむ手紙でした。
虐待を経験した人の便りもありました。虐待に耐えた過去の自分へのありがとう。その強さに触れて涙がこぼれました。
「いちばん多いのはやっぱり亡き人への手紙ですね。小学生の息子が事故死して、母親は放心状態。心配したおばあちゃんが “お母さんが大変や、慰めてあげて” と語りかける孫あての手紙が何通も届くんですよ。もちろん、突然消えたペットの亀へ、未来の孫へ、なんて可愛いのもあるけどね」
手紙をしたためる──それは誰にあてたものでも、自分の胸にそっと耳を傾ける行為にほかならないのかもしれません。だとすれば、行くあてがなくても、人が手紙を書く理由がわかるような気がしています。 敬具
〒769‐1108 香川県三豊市詫間町粟島1317‐2 漂流郵便局留
●●●様(いつかの、どこかの、だれか様)
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