簡単そうに思えますが、実際の資料ではどれかが足りないことが多いのです。たとえば、売り上げグラフに「数年で5%の上昇」とだけ書いてあるのは、空しか言及していません。これだけでは何が言いたいのか、何をすべきかがわかりません。その空を見て、さらに上がりそうなのか、横ばいになりそうなのかといった解釈があり、最後には「よって生産量を制限すべき」「積極的投資をすべき」などの傘までそろって初めて資料として意味のあるものになってくるわけです。
データだけというのもNGですが、感覚的に資料を作成する人だと、いきなり「○○すべき」という傘だけの唐突感のある資料もよく見掛けます。たとえば「人件費が高騰しているから(空)、残業を削減しましょう(傘)」という流れは、人件費がなぜ高騰しているのかという解釈(雨)がないため、結論の説得力がありません。
この空雨傘の3点セットで考えると、情報をまとめているだけになっていないか、何をすべきかまで、理由を含めて流れができているかどうかがチェックできます。ノートに簡単に、空雨傘の順番で書いて見るだけでもいいので、ぜひやってみてください。
ビッグワードでごまかす人たち
空雨傘で論理飛躍はなさそうであるにもかかわらず、何が言いたいのかが伝わらない資料は、だいたい言葉の選び方に原因があります。
よくあるパターンとしては、「ビッグワード」を多用してしまうことです。ビッグワードとは、とらえ方次第でどうとでも解釈できるような、あいまいな状況を示す言葉のこと。ビッグワードは一見それっぽくかっこいい表現にも見えるため、多用しがちですが、ビッグワードを使うことでそれ以上深く考えなくなってしまったり、自分の意図していることと違うとらえられ方をしてしまうというリスクがあります。
ビッグワードを使った表現を挙げてみると、「問題が山積みになっています」といったものがあります。このフレーズは「問題」も「山積み」もどちらもビッグワードで、読む人によっていろいろな解釈をしてしまいます。まず、「問題」は、どの問題を指しているかわからないし、「山積み」もどれくらいの量なのかがわかりません。こういった場合は、「滞留在庫が1週間分を超えています」と「問題=滞留在庫が増えている」「山積み=1週間分のロスが生まれている」と、誰もが誤解をしない言葉に変換する必要があります。
私がコンサルタントになって駆け出しのときに注意されたのが「『最適』という言葉を絶対に使うな」ということでした。「最適」という言葉もビッグワードです。聞こえがいいので、つい使ってしまいがちなのですが、よくよく考えたら、どんな状態が「最適」なのかを定義しなければ、この表現は何も言っていないのと同じです。
この場合も、たとえば物流システムであれば「24時間以内に商品が出庫され、納期を厳守できる」と書き下さなければなりません。つまり、あいまいな言葉を数字に置き換えたり、具体的な状況に変換したりして、ビッグワードを細かく砕いていきます。
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