なぜ日本には外国人労働者が殺到しないのか 日本の「働く国としての魅力」は61カ国中52位
さらに、働き先を決める大きな要因となる給料も、アドバンテージがあるわけではない。OECD(経済協力開発機構)が調査した各国正社員給与水準の推移を見ると、日本の給与水準は上位の米国、スイス、オーストラリアの後塵を拝し、先進国の中では韓国と同程度の低位に位置している。また、このデータに「成長率」を組み合わせた野村総合研究所の分析では、日本の給与水準は「低水準+低成長」に分類される。これは財政問題を抱えるイタリアと同程度である。
先ほどの日本国際化推進協会の調査では、「日本で働くことが魅力的」と答えた外国人は2割しかいなかったが、「日本で住むことが魅力的」という回答は8割を超えた。しかし、労働力として彼らに定住してもらうためには、解決すべき問題が山積している。
経済産業省「内なる国際化研究会」の調査によると、外国人の多くが在留資格の手続きや永住許可の取得要件の厳しさに不満を抱いていることがわかる。また生活環境においても、外国人の子供が通えるインターナショナルスクールや、英語が通じる病院が少ないことに不満を感じている。こうした問題は外国人が「働く」うえで大きなマイナス要素だ。
働き手の争奪戦が始まる
2015年に1億2709万人(国勢調査調べ)であった日本の総人口は、国立社会保障・人口問題研究所の推計によると、2030年には1億1662万人になると予想されている。この記事の冒頭で、日本では過去15年間でおよそ200万人も労働人口が減少したと紹介したが、残念ながら次の15年も日本の労働人口は減る一方となることは避けられない。
しかも次の15年は、これまで以上に厳しい現実が待ちかまえている。これまで「労働力供給国」として日本にも「働き手」を供給してきたお隣の中国でも、2015年頃に生産年齢人口がピークを迎え、以後減少しつつあるからだ。日本と同じように少子高齢化問題を抱え、自国の「働き手」が足りなくなると、「供給国」から一転して「受け入れ国」になるだろう。
日本で「働き方」が見直されている背景には、こうした、世界中で「働き手」の取り合いが始まりつつあることと、日本に外国人に働きに来てもらうことが一筋縄ではいかない事情があるのだ。
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