自閉症の少年はディズニーで言葉を覚えた 「ぼくと魔法の言葉たち」で映し出されるもの

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ロジャー・ロス・ウィリアムズ監督が手がけた本作は、2016年のサンダンス映画祭でプレミア上映され、USドキュメンタリー部門監督賞を受賞した(写真:古川雅子)

ウィリアムズは、2010年にアカデミー賞短編ドキュメンタリー賞を受賞。アフリカ系アメリカ人監督として初めてのオスカー受賞者となった。すべての作品に共通するのは、貧困や人種差別、障がいなどに立ち向かう、ともすれば「はみ出し者」とされる人々を擁護する姿勢。監督自身が「はみ出し者」ゆえの疎外感を抱いてきた。ゲイで黒人。コミュニティーからも見捨てられ、頭の中に物語世界を作らなければ、生きていけなかったという。

「僕の映画づくりの情熱は声なきものに声を与えることにある」

とウィリアムズ。だからこそ、「オーウェンの視点」から物語世界を描くことに心を砕き、彼が伝記のように紡ぐ物語とスケッチをアニメ化して織り交ぜた。オーウェンが愛するのは、主役ではなく脇役のキャラクターたち。彼はアニメ映画を通じて、「すべての人が重要だ」というメッセージも学んでいた。

幻の受賞スピーチ

大統領選後の米国では「はみ出し者」に一層厳しい現実が突きつけられている。監督は言う。

「もし、この映画がアカデミー賞を受賞したら、受賞スピーチでトランプ大統領に、『障がいがある人のモノマネをしないでくれ、彼らに対して寛容さと受容の精神を持ってほしい』と促すつもりでした」

ささくれ立った社会だからこそ、オーウェンのようなおおらかな視点が欠かせない。

(ライター・古川雅子)

AERA 2017年4月10日号

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