「庶民ほど税に苦しむ」異常な国、日本の現実

富裕層は「抜け穴」で恩恵を受けまくる

2016年10月、横浜市中区の赤レンガ倉庫のイベント広場で開かれた「ふるさと納税大感謝祭」には、全国61市町村の「出店」が軒を並べ、「地方物産展」の様相となった。ふるさと納税の返礼品を選びながら寄付の手続きもすることができるインターネットのサイト「ふるさとチョイス」を運営するトラストバンクが2日にわたって開催した。

初日は午前10時のオープンとともに、待ちかねた来場者が会場になだれ込み、足の踏み場もないぐらいの盛況になった。中でも行列ができたのは、宮崎県都城市のコーナーだった。持ち込んだホットプレートで焼いた人気の宮崎牛が試食でき、紙コップで焼酎の「白霧島」を試飲できる。

2015年度のふるさと納税の寄付額が約42億3000万円で首位となった都城市の人気の高さを見せつけたが、会場がある横浜市は逆に、2015年度のふるさと納税による市民税の流出が約31億5000万円、市民が払う県民税の減額が約21億円と、いずれも全国一多かったので、皮肉な光景だった。

都城市は、「宮崎牛サーロインブロック」や地元でつくる芋焼酎「1年分365本(1本1.8リットル)」などが売りだ。その特集サイトでは、通販のカタログ感覚で豪華商品を選ぶことができる。

焼酎1年分は、100万円以上を寄付した人が対象だ。この金額を減税対象とできるのは、給与収入の場合だと年間3000万円を超え、多額の所得税と住民税を納めている高所得者だ。100万円を寄付すると、2000円の自己負担を除いた99万8000円が減税され、小売価格で60万円超にあたる焼酎1年分がもらえる。同市によると、「忘年会でふるまいたい」などと、経営者や医師らがこの返礼品を選んだという。

返礼品競争の実態を調べるため、ふるさと納税による2015年度の寄付の受け入れ額から2016年度の市町村税の減額分を引いた市町村の「収支」を計算した。

すると、全国1741自治体のうち「黒字」は1216自治体で計約1473億円にのぼった。ただし、黒字額でも42億1000万円と1位の都城市など上位の10自治体に黒字の19%、100自治体に黒字の63%が集中しており、一部の市町村が寄付をかき集めている姿が浮かび上がった。一方、「赤字」の自治体は都市部に多く、横浜市が約28億円、名古屋市が約18億円、東京都世田谷区が約16億円などと続いた。

「法人なり」による節税

個人と法人にかかる税率の違いが広がっているため、実態は個人の事業なのに法人を作る「法人なり」と呼ばれる節税方法も広がっている。

個人の所得にかかる所得税の最高税率が2015年から上がり、年収で4000万円を超える所得には45%の税率がかかっている。所得税の最高税率は2007年にも上がり、年収1800万円を超える所得に40%がかかる。一方、安倍政権の経済政策アベノミクスで法人実効税率は下がり、2016年度に29.97%と、20%台になった。

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