任天堂は、変えることをどんどん変える 任天堂・岩田聡社長ロングインタビュー(下)
これって過去の任天堂はやらなかったことですし、やりたくてもできなかったこと。3DSをこれまでやってきて、デジタルの仕組みを作って、「どうぶつの森」をたくさんのお客様がデジタルで体験されて。こう繰り返すなかで、お客様と任天堂の中とでやれることが変化してきて、新しいビジネスの形ができてきたわけです。
いままで任天堂は500円のソフトを売る仕組みを持っていなかったんですね。5000円のソフトを売る方法はあったけれど、500円のソフトをまとまった単位でお客様に届ける方法がなかった。それができてきたということだと思うんです。
「本当に時代は変わっている」
もうひとつ。これはマス宣伝をしない中でこれだけの広がりを見せたことに、「あぁ本当に時代は変わっているんだな」という手ごたえがある。
もちろんお客様が出したおカネに見合うだけの価値を感じてくださるという関係が成り立つようにどうしてもしたいし、あとからだまされたということになると、お客様と任天堂との信頼関係は壊れてしまう。遊ばれた方が面白かったよと、言ってくださるようなもの、いわば値段以上の価値を感じてくださるように努力をし、それをお客様に共感をいただけたときにこういうことが起きると思うし、新しい可能性だと思っているんです。
任天堂はデジタルの分野は、どちらかといえばパッケージの流通その他の事情もあるので積極的ではないとか、やる気がないとの見方もあったかもしれません。しかし、われわれはわれわれでどうすればソフトの価値を毀損せずに、世の中の変化に対応できるかを模索してきたわけです。
私はデジタル化というのは、対応を誤るとソフトの価値が限りなく安い方向に引っ張られやすいと思っています。ソフトの値段が下がることは、お客様からするといいことだという理屈もある。だが、作り手としてはやはり作るのに必要なエネルギーに見合うだけの収入、対価が得られなくなったら、それは持続可能性のある仕事ではなくなる。
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