任天堂社長が説く、ヒットゲームの新法則 任天堂・岩田聡社長ロングインタビュー(上)

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私たちが提案するゲームソフトは、出すもの出すものすべてが大当たりしているわけではありません。われわれの提案がうまく受け入れられている場合と、そうでない場合とがある。

いま話題になるものは、より話題になるように動く。一方で情報の総量が多いので、話題にならないものはあっという間に消え去り、忘れ去られ、情報の中に埋もれてしまう。

私が今いちばん感じているのは、ビデオゲームという娯楽がお客様のアテンション(注意)を集めることが以前より難しくなっている、ということです。世の中に流れる情報量が多いので、その中から人が注意を向けられるものは限られる。それに選ばれるか、選ばれないかですごく大きな差が出る。

ニンテンドー3DSで12年11月に発売した「とびだせ どうぶつの森」のようなソフトは、かつてビデオゲームが好調といわれたときと変わらず、あるいはそれ以上の勢いで売れる(※)。ソーシャルメディアを通じて情報共有されることが、ポジティブなスパイラルになる。そのゲームをみんなが話題にし、話題になったことで興味を持つ人がますます増えていく。ビデオゲームがはやっていないと論評されるのはどなたですか、というくらいの売れ方をするわけです。

※発売半年で400万本のヒットとなった。前機種ニンテンドーDS版が、最も勢いのあった時期に出したソフト「おいでよ どうぶつの森」は520万本。

「共感がひとつのキーワード」

一方で、ビデオゲーム全体としてみれば、たとえばかつてテレビゲームがものすごくはやったときは、新しい大作ソフトが出ると、発売という事実だけでニュースになった。ところが今は発売されて多くの人が楽しんで、その人たちがソーシャルメディアでさまざまな情報を発信して初めてニュースとなる。

これはビデオゲームに限ったことではなく、あらゆることのヒットのハードルが上がっている。情報の洪水の中でお客様にスルーされない情報になるためにはどうすればよいか。ほかの分野の皆さんも努力されていると思うが、ビデオゲームの分野も同じように努力しているのです。

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