繁栄と無縁だったアメリカ白人たちの正体 取り残された街がトランプを大統領にした
格差の問題が叫ばれて出して久しいが、格差が深刻化する中でさらなる問題が沸き上がりつつある。「格差を是正せよ」「ダイバーシティって素晴らしい」という掛け声とともにフォーカスが当たるのは、いつだって最底辺に位置するマイノリティの人ばかりなのである。
アメリカの白人労働者階層「ヒルビリー」
「鶏口となるも牛後となるなかれ」とはよく言ったものだが、アメリカで実施されたある調査でも、それを裏付けるような結果が出ている。子供世代が自分たちよりも経済的に豊かになるだろうと答えた人の割合が、黒人やラテンアメリカ系住民で優に半数を超えたのに対して、労働者階層の白人の場合は、44%のみにとどまったのだ。
このアメリカの「牛後」にあたる白人労働者層には、共通の特徴がある。多くは18世紀に移民としてやってきたスコッツ・アイリッシュ達で、南はアラバマ州やジョージア州、北はオハイオ州やニューヨーク州にかけて広がるアパラチア山脈の近くに住み出した。
先祖は南部の奴隷経済時代に日雇い労働者として働き、その後は物納小作人から炭鉱労働者に身を転じ、近年では機械工や工場労働者として生計を立ててきた。「ヒルビリー(田舎者)」と呼ばれた彼らは代々貧困を受け継いでおり、アパラチアから五大湖周辺のラストベルト(錆びついた工業地帯)に移住したものも多かった。
このラストベルトに位置する州の多くは製造業の衰退、人口減少、移民増加といった共通の課題を抱えており、さしたる注目を集めてこなかったのが実情だ。ところが先のアメリカ大統領選においてにわかに注目を集め、結果的にはこの地域の票が一気に傾いたことによってトランプ大統領が誕生したのである。
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