「ドラギ発言」から1年、次なる行動は? 口約束だけで通じた局面は終わりか

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7月25日、ドラギECB総裁が、ユーロを守るために「必要なことは何でもする」と宣言してから1年。総裁は大惨事を防いだと胸を張って良いだろうが、ほどなく言葉を行動で裏付ける必要に迫られるかもしれない。4日撮影(2013年 ロイター/Ralph Orlowski)

[フランクフルト 25日 ロイター] - ドラギ欧州中央銀行(ECB)総裁が、ユーロを守るために「必要なことは何でもする」と宣言してから1年。総裁は大惨事を防いだと胸を張って良いだろうが、ほどなく言葉を行動で裏付ける必要に迫られるかもしれない。

投資家がユーロ圏の崩壊に賭ける取引を膨らませていた1年前、ドラギ総裁は夏のロンドン講演で即興で発したわずか23の英単語により、ユーロ圏債務危機の潮流を覆した。「ECBはその使命において、ユーロを守るために必要なことは何でもする。私を信じてほしい。それは十分な措置となるはずだ」

この言葉だけで市場を落ち着かせるには十分だったが、その後6週間にわたる舞台裏の激しい外交駆け引きや表立った口論を経て、ECBは厳しい条件を飲んだ国の国債を無制限に買う国債買い入れプログラム(OMT)を発表するに至った。

それから1年が経過したが、ECBはまだOMTに手を付けていない。

OMTは市場にとって核抑止力のようなものだ。利用をちらつかせるだけで、ぎこちない平和を達成するだけの効果を持つ。ドラギ総裁は先月「OMTはおそらく最近導入された中で最も成功した金融政策措置だったと言わざるを得ない」と自賛した。

投資家もこれには同意する。ユニオン・インベストメントのマイケル・ハーザム氏は「ドラギ総裁の講演は状況を一変させた。ユーロ圏崩壊の確率を大幅に抑えることで、市場からシステミックリスクを取り除いた」と述べた。

講演当時にはユーロ圏周縁国の国債相場が急落していただけでなく、ユーロ自体も講演前の1年間に対ドルで15%下落していた。その後状況は反転し、過去1年間で9%上昇している。

欧州の優良株指数<.FTEU3> は以来、約20%上昇。イタリアとスペインの2年物国債利回りは講演前にそれぞれ5%と6.4%だったが、今では2%を割り込み、両国は多額の利払い費を節約できることになった。

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