「耳に差し込まないイヤホン」は何が凄いのか 商品はスペックよりストーリーで売れていく

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でも、みんながみんな、高音質にこだわっているわけではない。iPhoneに付属しているヘッドホンをそのまま使っている人が多いわけですから。一般の人には、ハイレゾなのかノーマルなのかなんて、比べて聴かない限り区別はつきません。とくに若い人たちは音質の差なんて気にしていない。むしろ大事なのは、どう使うか。「みんなで会話しながら音楽を聴けるって楽しいよね」というリアクションになる。

伊佐山 元(いさやま げん)/1973年2月、東京都生まれ。1997年、東京大学法学部卒業後、日本興業銀行(現・みずほフィナンシャルグループ)に入行し、2001年よりスタンフォード大学ビジネススクールに留学。2003年より、米大手ベンチャーキャピタルのDCM本社パートナーとして、シリコンバレーで勤務。 2013年夏より、シリコンバレー在住のまま、日本の起業家、海外ベンチャーの日本進出を支援することで、新しいイノベーションのあり方やベンチャー育成の仕組みを提供する組織を創業中。日本が起業大国になることを夢見ている(撮影:編集部)

日本の大企業は、概して「高機能化」に向かいがちです。「高くて良いもの」も大切ですが、それを適正価格で、新しくリパッケージする商品には新市場を生み出す力がある。それはアップルのiPhoneの事例を見れば明らかです。

高機能化で先頭を走って高価格のハイエンドゾーンで評価されたとしても、ボリュームゾーンを海外の企業に取られてしまえば事業を継続できなくなるわけです。過去を振り返ると、パソコン、携帯電話、液晶テレビなどさまざまな分野で苦い経験をしてきた。でも、いろいろなしがらみとか習慣が染み付いているので、自分たちだけでは変えられない。

「とにかくシンプルにするべきだ」というスティーブ・ジョブズの考え方を取り入れるのが、日本の大企業は苦手。別の角度からいえば、日本の大企業は完璧主義が強すぎるともいえます。せっかく良い技術であっても、「欠点があるものは出すわけにはいかない」と考えるわけです。

WiLは一緒になって「出島」を作っていく

――単一製品の機能強化ばかりに目が行ってしまう。

そうですね。これを飛び越えて、今あるルートやフレームワークを破る勇気がないと、ambieのような製品はできない。日本には年功序列があるから、若い社員が面白いことを提案しても、上司が「それうちの規定では駄目だ」とか言われた瞬間に、ボツになってしまう。それはなかなか変わらない。だったら、そこを飛び越すための新しい場所として「出島」を作ればいい。

その出島を一緒に作るのがWiLです。ambieが成功すれば、必ずソニーにとっても刺激になります。おそらくソニーの社内では「なんであれがあんなにうまくいったのだろうか」という風に話題になっている。身近な実例を見ることで、変革の歯車は自然に動き出すはずです。

関田 真也 東洋経済オンライン編集部

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せきた しんや / Shinya Sekita

慶應義塾大学法学部法律学科卒、一橋大学法科大学院修了。2015年より東洋経済オンライン編集部。2018年弁護士登録(東京弁護士会)

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