ついにデフレ脱却? 物価上昇に継続の兆し 期待インフレ率重視に手応え
期待インフレ率の上昇、現実味あると判断する日銀
マクロ的には賃金上昇の行方がカギを握るとの声が、市場関係者ばかりでなく、政府部内からも広がっている。日銀でも黒田東彦総裁が今後の所定内賃金の動向について「春闘のサイクルがあり、すぐに上がるのは難しい」(7月11日の会見)と発言するなど、消費増税が重なる来年の春闘に注目している。
ただ、日銀の異次元緩和では、単に賃金の上昇にとどまらず、全く新しい金融政策のレジームの下で、マネタリーベースを大胆に増加させれば、インフレ期待が上昇し、そのことで経済全体の循環に変化を与え、結果として物価が上がるという見方を採用している。
今回の物価上昇は、そのプロセスの始まりであり、期待インフレ率の上昇とともに物価上昇が継続するとの期待感を強めている。
フィリップス曲線の押し上げで、需給ギャップ解消は可能か
白川方明前総裁の日銀では、需給ギャップを短期間で埋めて、2年間で2%の物価上昇を達成するのは難しいとの声が主流だった。
しかし、現在は期待インフレ率の上昇によって、失業率や経済成長率と物価の相関を示すフィリップス曲線の傾きをスティープ化させ、需給ギャップをゼロにすることが可能であり、その可能性は高まっているとの立場だ。
これを現実の経済現象に当てはめると、消費者物価指数のプラス転換を契機に、価格転嫁の動きが円滑に進み、人々に染みついた物価観が上がらないという見通しが修正されるということになる。
ただ、その見方に懐疑的な声もある。ある日銀OBは期待インフレ率のシフトが成功するかどうか、「今の時点では両方の可能性がある」と説明する。
また、政府関係者の一部には、2%の物価上昇は無理でも1%程度でも上がれば、政策目標は達成されたのと同じだとの声もある。