北朝鮮による暴走が止まらない。3月6日には、北朝鮮西岸から日本海へ向け4発の弾道ミサイルを発射。安倍晋三首相とドナルド・トランプ大統領の日米首脳会談直後、2月12日にも弾道ミサイルの実験を行っており、2017年に入ってからもハイペースでミサイル実験を行っている。
同じく2月には、金正恩朝鮮労働党委員長の異母兄、金正男氏がマレーシアで殺害され、北朝鮮による暗殺との見方が大勢を占めている。こうした動きの背景には、どんな意図があるのか。米国の有力シンクタンク、外交問題評議会(CFR)の北朝鮮専門家、スコット・スナイダー氏に話を聞いた。
――金正恩体制はどの程度安定しているのでしょうか。反対勢力が現れる兆候は?
正恩が権力を掌握しているのは明らかだが、全体主義体制は不透明なものになっている。つまり、実際に何らかの「不安定さ」を示す事態が起こるまでは、実際の体制がどういう状態にあるのかはわからない。経済的には非常によくやっているし、政治的にも恐怖で国を支配している。恐怖による支配下では、反体制活動を仕掛けるのは難しい。
脅威がないところに脅威を作り出した
――金正男の暗殺を疑われていますが、国際的反発を招くリスクを冒したのはなぜでしょうか。
恐怖による統治にはしばしば、脅威がないところに脅威を見いだすなどの被害妄想が絡むことがあります。金正男の場合はおそらくそうなのだろう。正男自体は金正恩に対して権力的には、何の脅威も与えてなかったが、金王朝一族の血統上の地位から、潜在的な脅威にはなっていたのだろう。
現実的には、正男は自身の権力基盤をまったく有していなかった。彼には北朝鮮で強力な後ろ盾となる人がいなかったからだ。そもそも彼自身、正恩に直接対抗することに、まったく興味を持っていなかった。仮に持っていたとしても、彼がそれを実行できたとは思えない。
歴史的には、たとえ王朝時代であっても、反抗分子だと見なされた場合、国外追放されてきた。金日成や金正日はこうやって地位を築いていったわけだが、金正恩の異母兄弟の追放は彼が「安心」するには不十分だったわけだ。
――最近のミサイル実験、特に日米首脳会談後に行われた実験の動機はなんだったのでしょうか。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら