シャープ戴社長「鴻海流コストカット」の全容 堺工場のエスカレーターは運転を停止

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第三は、後ろ盾となっている鴻海のフル活用だ。これまでの経営陣が取引先と結んできた不採算取引が低い利益率の原因となっており、それらの解消や見直しを進めてきた。たとえば、太陽光パネルの原材料であるポリシリコンは、長期購入契約によって直近の時価水準を大幅に上回る価格で購入せざるを得ない状況が続き、太陽光パネル事業の赤字の原因となっていた。戴社長は「(親会社で)世界最大のEMSである鴻海の力をもって解決していく」と2016年11月に宣言。今年2月には原材料の購入に係る契約を変更したこと理由に2016年度の営業利益予想を101億円上方修正した。

サムスンとは軋轢も

さらに昨年末、シャープと堺ディスプレイプロダクト(旧シャープ堺工場、以下SDP。現在は鴻海のテリー・ゴウ董事長の資産管理会社傘下)は大口顧客である韓国・サムスン電子への液晶パネル供給の停止を決定。サムスンとのテレビ向け液晶パネルビジネスは、取引量は多いものの利益率は低く、液晶事業の採算改善の足かせとなっていた。これを問題視した鴻海がサムスンとの取引から手を引くようシャープに促したものとみられる。

もっともこの件に関しては、サムスンが1月にSDP、シャープ、黒田電気(液晶パネル商社)に対して、4億2900万ドルの損害賠償と液晶パネル供給の再開を求めている。サムスンとの軋轢も辞さない強気の姿勢も鴻海流といえよう。

こうした聖域を設けないコストカット効果で見込む2017年3月期の営業益は474億円、営業利益率は2.3%。直近で黒字決算だった2014年3月期の営業益は1085億円、営業利益率は3.7%あったことを考えるとまだ十分な水準とはいえない。コストカットが一巡した今後は、売り上げ拡大による再成長への道筋を示す必要がある。

田嶌 ななみ 東洋経済 記者

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たじま ななみ / Nanami Tajima

2013年、東洋経済入社。食品業界・電機業界の担当記者を経て、2017年10月より東洋経済オンライン編集部所属。

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