創業社長を追放したジャフコ「謀略」の誤算 経営者解任に乗り出したジャフコ。そこに落とし穴が……

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「出口戦略」に誤算も

ただ、「実質2期連続赤字」の当否については両者間で認識が異なる。小林氏は松谷氏が最高財務責任者として過去の決算にかかわってきたことを例に挙げて「責任逃れをしている」と批判する。「監査法人の指導」を理由に、2013年3月期決算が大幅な赤字になったことについても恣意的だと主張する。

ここで見逃せないのが、ジャフコの思惑だ。ジャフコは昨年秋、ある株主による株式買い取り請求をきっかけとした資本構成の見直しを経て、53%の株式を握る支配株主に躍り出た。当時のやり取りの記録からは、ジャフコの塙氏が過半数の株式を握るべく、小林氏に強い口調でプレッシャーをかけていた様子が読み取れる。

そして支配権を確立したうえで、当時、小林氏の経営に批判的だった松谷氏に着目し、小林氏の追放で利害が一致したというのが真相ではなかろうか。その際に、「業績不振」「資金繰りの悪化」を理由に据えたと見ることもできなくはない。

ジャフコは「出資先に関する取材には応じない」との姿勢を貫くため真偽はわからない。しかし、排除に成功したはずの小林氏が第2位株主として徹底抗戦の姿勢を打ち出しており、上場を目指すにせよ、転売にせよ、「出口」は容易ではない。

ベンチャーキャピタルとして、投資先企業が業績不振なら、経営者の交代を求めることはありうる。ましてや50%超を握っていれば、取締役選任、解任とも権限は手中にある。

とはいえ、解任手法や連帯保証を外さないことなど、今回はやりすぎと批判されてもおかしくない。こうした乱暴な手法が知れ渡れば、中小企業側がジャフコからの出資を敬遠する動きにもつながりかねず、決してプラスにはならないだろう。

週刊東洋経済2013年7月27日号

岡田 広行 東洋経済 解説部コラムニスト

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おかだ ひろゆき / Hiroyuki Okada

1966年10月生まれ。早稲田大学政治経済学部政治学科卒。1990年、東洋経済新報社入社。産業部、『会社四季報』編集部、『週刊東洋経済』編集部、企業情報部などを経て、現在、解説部コラムニスト。電力・ガス業界を担当し、エネルギー・環境問題について執筆するほか、2011年3月の東日本大震災発生以来、被災地の取材も続けている。著書に『被災弱者』(岩波新書)

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