「円高ドル安」がまだ続くと読む本質的な理由 「円高はトランプ発言のせい」は間違い

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市場では、イエレンFRB議長が早期利上げを示唆していることから、米国では今月の14~15日に開催されるFOMC(米連邦公開市場委員会)にも利上げが実施されるとの指摘もある。

一方、欧州では、3月15日のオランダの議会選挙を皮切りに、主要国で総選挙や大統領選挙が実施される。不透明感が高まる中、債券市場が不安定になりつつあることは、利上げ見送りにつながりやすい。

現在のような不透明な環境の中、無理に金利を引き上げる理由はどこにもない。市場の不透明感が高まれば、米国債に資金をシフトする投資家が増えるだろう。そうなれば、米長期金利はますます上昇しづらくなる。米国への資金フローでドル高になるとの考えもあろうが、いまは為替リスクを積極的にとりづらいことから、為替ヘッジ付きの投資になる可能性が高く、フローとしてのドル買いが出づらい。このことも、ドル高になりづらい理由だろう。

円高になりやすい地合いはまだ続く

今後のドル円相場はどうなるか。欧州の政治不安を背景に、再びユーロ売り圧力が強まる可能性がある。しかし、トランプ大統領がユーロ安に圧力をかける可能性があり、ユーロは対ドルで大きく下落することはないだろう。

そもそも今の米国は、長期はさておき、ドル安を志向している。これは、大統領であるトランプ氏、国家経済会議(NEC)のコーン委員長、そして財務長官のムニューチン氏の共通の考えである。

「製造業の復活」をうたうトランプ政権にとって、為替政策はドル安が基本だ。政治面・実質金利面でなお円高になりやすい地合いにあることを理解していれば、円高におびえるのではなく、円高を利用することを考えるという思考に変わるだろう。やや乱暴な言い方だが、そうなれば、現在のトランプ大統領の発言はむしろ、心地よいくらいであろう。

もちろん、今後、トランプ政権が具体的にどのような政策運営を行うかを見極める必要はある。だが、外交面や一部閣僚の人事でつまずきがみられるものの、経済面に関する過度な心配は不要であろう。「政策に売りなし」との相場格言に従うのであれば、今は米国市場に関心を持ち、トランプ政権が行う政策に素直についていくことが求められそうだ。

江守 哲 コモディティ・ストラテジスト

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えもり てつ / Tetsu Emori

1990年慶應義塾大学商学部卒業後、住友商事入社。2000年に三井物産フューチャーズ移籍、「日本で最初のコモディティ・ストラテジスト」としてコモディティ市場分析および投資戦略の立案を行う。2007年にアストマックスのチーフファンドマネージャーに就任。2015年に「エモリキャピタルマネジメント」を設立。会員制オンラインサロン「EMORI CLUB」と共に市場分析や投資戦略情報の発信を行っている。2020年に「エフプロ」の監修者に就任。主な著書に「金を買え 米国株バブル経済の終わりの始まり」(2020年プレジデント社)。

 

 

 

 

 

 

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