2017年春以降のドル相場「反落」に備えよう 試されるトランプ大統領の忍耐力
トランプ氏の勝利で終わった米大統領選挙後、ドル円相場は市場予想に反して急騰しており、選挙後の約1か月で約15円の上昇、12月15日にはFRB(米国連邦準備制度理事会)のタカ派寄りの情報発信を受けて遂に118円台へ突入した。トランプ氏勝利はもとより、選挙後の相場展開も完全に筆者の想定外であった。読みを外してしまったことは事実なので、猛省した上で、今一度、来年の見通しを冷静に考え直してみたい。
筆者はちょうど1年前の東洋経済オンライン記事(「2016年が5年ぶりの円高ドル安になる理由」)で今年は円高の年になると予想していた。この際、問題意識として重視したのは「2016年以降の米通貨政策におけるドル高への懸念は、強まることはあっても弱まることはない」という論点であり、それゆえに「FRBの利上げも思うように進まない」と述べた。結論から言えば、1年経った今も筆者のそうした問題意識は変わっていない。いや、むしろ2017年の為替相場では一段と米国の通貨政策の立ち位置を読む重要性が増したように思える。
「米国の通貨政策」の立ち位置とは、「トランプ大統領の顔色」にほかならない。これほど一方的なドル高をトランプ次期大統領が許容してくれるのかどうかはまったく予断を許さない。同氏は選挙期間中のみならず、当選後もあからさまに国内製造業保護をにらんだ言動を繰り返しており、通貨政策は明らかにドル安に傾斜している。少なくとも今後1年を見通した場合、過去2年のようなペースでドル高が進むことをトランプ次期大統領が我慢できるとは筆者はまったく思わない。
今は「景気を熱する前に冷やしている」状況
また、これほどまでに米金利やドルが急騰してしまった以上、その悪影響を懸念するのが自然だが、現在の金融市場は今後予定される大型の財政出動でそれは相殺できると見込んでいるようである。だが、財政出動の内容、規模、時期は明らかになっていない。ただ1つ明らかなのは、支出が始まるのは最速でも2017年10月に始まる会計年度であり景気刺激効果の発現は2018年以降という事実である。
現段階では何を考えても想像の域を出ない以上、そうした「分かりもしない財政支出の影響」に右往左往するよりも、「既に起きてしまったことの影響」を心配した方が懸命ではないかと筆者は思っている。
今年11月11日の講演でフィッシャーFRB副議長は「25ベーシスポイント(0.25%)の10年金利の低下は米国のGDP(国内総生産)を0.5%ポイント引き上げる」と述べた。だが、11月の1カ月間で米国10年金利は約60ベーシスポイント(0.6%)上昇している。副議長の試算に関し金利の上昇と低下の効果が対照的とすれば、米国のGDPを1.2%ポイント押し下げる効果があるという話になる。
また、今年9月12日の講演でブレイナードFRB理事は2014年6月~2016年1月までの約20%程度のドル相場の上昇について8回分、すなわち25ベーシス×8回≒200ベーシスポイント(2%分)の利上げに相当すると述べた。11月の1カ月間でドルインデックスは約4%上昇しており、単純計算では2回弱の利上げに相当するイメージとなる。
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