2017年春以降のドル相場「反落」に備えよう 試されるトランプ大統領の忍耐力
なお、日米金利差、特に10年金利差に対する為替の反応が注目されているため、その論点に照らして水準を検討しておきたい。過去1年間の日米10年金利とドル円相場の関係をもとに、単回帰分析によって推計値を導出してみた。現状の日米10年金利差を前提に推計したドル円相場の水準イメージは「120±6円」となる。もちろん、推計なので幅を持って見るべきだが、仮に11月以降のような米国金利の上昇が続き、その一方で円金利が日銀のイールドカーブコントロールの下で低位固定され続けるとすれば、120~125円といった予想レンジはさほど無理な話でもないのだろう。
すでにドル相場は高く、来春には反落
しかし、ドル相場は名目実効相場(NEER、多通貨間の関係でドルの価値を見たもの)で見れば、2016年に入って高止まりしており、円以外の通貨に対する上昇余地は既に相当限られていることにも目を配りたい。例えば、トランプ次期大統領が通商上、目の敵にするメキシコペソは対ドルでの史上最安値を断続的に更新している。このような状況がさらに極まっていくことを同氏は許すだろうか。
NEERに代表されるドル相場の水準をみれば、レーガン元大統領の経済政策(レーガノミクス)が着目された時代(1980年代前半)やルービン元財務長官の下、「強いドルは国益」の発言(ルービノミクス)が注目された時代(1990年代後半~2000年代前半)と比べれば、まだ上昇余地はあるといった声もある。
だが、そうした比較は適切ではない。それら2つの時代は、そもそもドル安だった状態からドル高への転換が志向された時代であった。これに対し現在は、既に大幅なドル高が進んだ状態にあり、そこからの再加速という話になる。「安かったものが高くなること」と「高いものがさらに高くなること」では蓋然性が異なる。既にドル相場は米国経済にとって相当高い水準まで来ている。
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