2017年春以降のドル相場「反落」に備えよう 試されるトランプ大統領の忍耐力

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以上の議論を整理すれば、市場の期待するように、トランプノミクス(トランプ次期大統領の経済政策)を受けて米国経済の過熱シナリオは実現するにしても、それは2018年以降であり、2017年は副作用(金利高・ドル高)だけが先んじて居座る状況になる。財政出動は最速でも1年先の話だが、通貨・通商政策は大統領の意思で直ぐに動けるというのも重要なポイントだ。一方的なドル高を受けて企業心理が崩れ始めたり、貿易赤字が拡大してきたりした場合、トランプ次期大統領が我慢できずに、けん制に動く可能性もある。

こうした基本認識の下、筆者は2017年には、複数回のFRB利上げを当て込んだ円安・ドル高シナリオは米国の政治・経済的に見て、耐え難いものになると考えている。大統領のハネムーン期間が終わり、政権の地力が見え始めるであろう4~6月期以降、ドル高へのけん制が意識されやすくなって、再びドル円相場は反転下落するだろう。

金利とドルの急騰を受けた実体経済の動揺も4~6月以降は、露わになってくる可能性が高い。歴史的に見ても、購買力平価(PPP、現在100円程度)から実勢相場がプラス20%以上乖離はすることは持続的ではなく、物価尺度に照らしても明らかに過剰である。現時点では、2017年末には再びPPPに照らして違和感のない100~105円のレンジに回帰する展開を予想したい。

2017年のブラックスワンは第2次プラザ合意

仮に以上のような筆者の予想が外れ、2017年を通してドル高が続いた場合も安心はできない。多くの人は忘れているかもしれないが、今年2月の上海G20に関し、事前には第2次プラザ合意(国際協調によるドル安誘導)への思惑があったし、事後には「暗黙の上海合意」に対する観測報道 が材料視されドル全面安となった。

現在のドル相場はその当時よりも高水準にある。ドル全面高が続けば、中国を筆頭とする新興国で資本流出が加速し、混乱が起きる。だからこそ、そのような国際協調の必要性がささやかれたはずである。少なくとも過去2年のペースでドルのNEERが上昇し続けた場合、為替市場で同種の観測が浮上する可能性がある。真偽はどうであれ、それはドル相場の重石となるだろう。

トランプノミクスをレーガノミクスと重ね合わせる向きがあるが、今起きていることが本当に「レーガノミクスの再現」ならば、行きつく先はプラザ合意である。これは2017年におけるブラックスワンとして予想しておきたい展開の1つと考える。

唐鎌 大輔 みずほ銀行 チーフマーケット・エコノミスト

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からかま・だいすけ / Daisuke Karakama

2004年慶応義塾大学経済学部卒。JETRO、日本経済研究センター、欧州委員会経済金融総局(ベルギー)を経て2008年よりみずほコーポレート銀行(現みずほ銀行)。著書に『弱い円の正体 仮面の黒字国・日本』(日経BP社、2024年7月)、『「強い円」はどこへ行ったのか』(日経BP社、2022年9月)、『アフター・メルケル 「最強」の次にあるもの』(日経BP社、2021年12月)、『ECB 欧州中央銀行: 組織、戦略から銀行監督まで』(東洋経済新報社、2017年11月)、『欧州リスク: 日本化・円化・日銀化』(東洋経済新報社、2014年7月)、など。TV出演:テレビ東京『モーニングサテライト』など。note「唐鎌Labo」にて今、最も重要と考えるテーマを情報発信中。

※東洋経済オンラインのコラムはあくまでも筆者の見解であり、所属組織とは無関係です。

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