「円高ドル安」がまだ続くと読む本質的な理由 「円高はトランプ発言のせい」は間違い
この消費者物価は日本よりも米国のほうが敏感に反応しやすい。特に米国の場合には、原油価格との連動性がきわめて高い。筆者は、米国の1月のCPI前年比の数値について、WTI原油の動きから2.5%上昇を見込んでいたが、結果はほぼ予想どおりであった。
このように、WTI原油の動向を見ると、米国のCPIの動きはかなり正しく推計できるのである。CPIは日本よりも米国のほうが高止まりあるいは上昇する可能性が高いことから、実質金利は米国のほうが低下しやすい。長期金利が思ったほど上昇しなければ、その傾向はさらに強まり、結果的に円高圧力が強まってしまう可能性がある。
現状は「ドル高円安になりにくい」構造
この関係を打破するためには、日本がデフレから早く脱却することが求められる。だが、現状ではこれが必ずしもうまくいっていない。インフレ率は原油価格上昇などで1月はプラスに転じたが、それは日銀の金融政策の効果ではない。日本のインフレ率が目に見えて上昇するのは、早くても年後半、遅ければ年末から来年初めにずれ込む可能性もある。そうなれば、再び円高圧力が強まることになろう。
このように、トランプ大統領がドル円について何も発言しなくても、現状では、なお円安に進みにくいのである。そのため、円安を前提として投資戦略を検討することは、上記の分析からすれば、無理があるとの結論になるわけである。
「トランプ政権が掲げる減税や財政出動が、米長期金利の上昇をもたらし、最終的にドル円は円高に向かう」との説明も多く聞かれる。しかし、これも過去のデータや事実を知らないことが理由ではないか。直近2回の共和党政権下では、財政出動の結果、財政収支の対GDP比が大きくマイナスとなり、結果的にドルは大きく下落している。
一方、米国では直近2回の民主党政権下において、財政収支の対GDP比は大きく改善し、ドル高になっている。トランプ政権が大規模な財政出動を行い、結果的に財政収支が悪化するようであれば、過去のデータからドル安に進むと考えるのが自然だ。この点についても、すでに本欄で解説済みである。現在、一般的に聞かれる市場見通しの多くは、円安を前提としている。しかし、上記のような材料を考慮すれば、その見通しの根拠を逆に考える必要があることに気づくだろう。上記のような分析を行えば、「円安ありき」の見通しにはならないのである。
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