消費者は、“情報疲労"している なぜ、日本人はモノを買わないのか?【第1回】

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PCやモバイル端末からアクセスできる評価サイト、企業ホームページ、身近な人からのクチコミ、店頭での販売員のおすすめなど、ネットを中心に情報量は増加の一途を辿っている。たくさんの断片的な情報がパラレルに入ってくることでかえって意思決定が難しくなり、どれを買うべきか、そもそも買うべきか、の判断がつきにくくなっているのだ。

消費者の7割が情報の多さに困惑

最近、アベノミクスの影響もあり、消費関連で明るいニュースが聞かれるようになっている。百貨店では高額商品が売れるようになり、2013年上半期の日経MJヒット商品番付では「高級時計・宝飾品」が東の横綱に選ばれている。

ただ、アベノミクス効果を十分に実感できていない人も多いのではないだろうか。確かに上流層、ストックリッチな層は株高の恩恵を受けて、消費額が増えている。だが、企業の方から、自社の商品が飛ぶように売れるようになったという声はさほど聞かれない。多くの人は消費額を増やしてもよいと考えるほど景気の好転を感じていないというのが実態であると思われる。失われた20年で培われた日本人のつつましき消費実態は継続中なのである。

筆者が所属する野村総合研究所では、生活者1万人を対象に1997年から3年ごとに、生活価値観や消費意識などについて調査を行っている。15年という長期時系列のデータから、社会環境の変化の中で、新たな方向へと踏み出した日本人の姿が見えてきた。その中の重要なキーワードとして、消費者の情報へのアプローチ方法や考え方が大きく変わってきていることが挙げられる。上記の2012年の調査では、消費者の実に70%が、情報が多すぎて困っていると回答している。

現在、多様なチャネルから多様な発信主体による大量の情報が流入してくるようになり、情報はどんなに集めてもきりがないぐらい膨れ上がっている。企業発の情報も決して鵜呑みにはできない。さらに口コミサイトでの「やらせ投稿」などの問題も表面化しており、ネット上で得られる第三者発の情報も信じてよいかわからない。失敗したくないゆえ、情報を集めるが、それでも「消費に関して、自分が間違った判断をしてしまうのではないか」と考えている人が、46%と半数近くに達していることからも、「迷える消費者」の時代になっているといえよう。

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