地方は結局「若者」を排除して自ら衰退する 「若者に活躍してほしい」は、ほとんど口だけ

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自分にできないことは年齢にかかわらず、むしろ「自分たちより高い報酬を支払ってでもやってもらう」という覚悟なくして、地方に良い人材が集まることはありません。

若者の感性を完全否定したら、そのまちは「おしまい」

さらに、3つ目は「イノベーション人材」の喪失です。若者が特段の迷惑をかけていないことでさえも、自分たちに理解できないことは、頭ごなしで「ダメだ」「劣化している」と決めつけがちです。匿名性の低い地方においては、そのような圧力によって、新たな芽がつぶされてしまう危険性があります。

たとえば、北九州市の成人式などはマスコミによって、「変な格好しているヤンキー」くらいに報道されたりして、つぶされそうになったことがあります。しかし、実際には地元でまじめに働く若者たちが何十万円もかけて衣装を作ったり、レンタル衣装を借りて、自分たちの文化として発信しているのです。そもそも、それだけのおカネを持っているということは、しっかりと働き、さらに計画的に預金を積み立てているからこそ、できることです。北九州市の知人によれば最近では「同じような衣装を着て写真を撮りたい」とわざわざ北九州市に来る人さえいるそうです。

このごろはよく「イノベーション人材を地方へ!」などという話で盛り上がりますが、そもそもイノベーションとは、従来のサービスや構造が、新しいものに置き換わることを意味します。自分たちに理解できない若者文化などを攻撃し、排除してしまっては、イノベーションもへったくれもありません。自分が理解できないことを否定しないことが、地方でイノベーションを起こす第一歩なのです。

もし、いま挙げたような「3つの人材」を排除していくと、結果として地方には上役の言いなりになる、「年齢こそ若いものの考え方は保守的で硬直的な人たち」が残っていきます。その結果、どうなるかは言うまでもありません。

今、実権を握る人はまずは役職を降り、若者に意思決定を委ね、事業報酬などはフェアに転換することが大切です。たとえば、宮城県女川町は、2011年の東日本大震災を契機に、官民のさまざまな組織で、意思決定を若い世代に委ねました。私も女川は被災前から知る地域だったため、その転換が被災後のまちづくりに大きな影響を与えるのを目の当たりにしました。過去の閉鎖性を未来につなげず、むしろ今の世代で大きく転換を果たし、若い人材に機会を与えることが求められています。

さて、4月25日(火)に「地方創生」や「日本の明日」について考える「超・生産性会議」(主催:東洋経済新報社、参加申し込み受付中)が東京・品川で開催されます。私も登壇しますので、ぜひお越しください。

木下 斉 まちビジネス事業家

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きのした ひとし / Hitoshi Kinoshita

1982年生まれ。高校在学時からまちづくり事業に取り組み、2000年に全国商店街による共同出資会社を設立、同年「IT革命」で新語流行語大賞を受賞。

早稲田大学政治経済学部政治学科卒業、一橋大学大学院商学研究科修士課程修了。

2008年に設立した熊本城東マネジメント株式会社をはじめ全国各地のまちづくり会社役員を兼務し、2009年には全国各地の事業型まちづくり組織の連携と政策提言を行うために一般社団法人エリア・イノベーション・アライアンスを設立。2015年から都市経営プロフェッショナルスクールを設立し、既に550名を超える卒業生を輩出。2020年には北海道の新時代に向けた「えぞ財団」を仲間と共に発足している。また内閣府地域活性化伝道師等の政府アドバイザーも務める。

著書に『まちづくり幻想』『稼ぐまちが地方を変える』『凡人のための地域再生入門』『地方創生大全』等多数。

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