金正恩が「身内の粛清」を繰り返す根本原因 父親は3代世襲を望んでいなかった

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――北朝鮮経済は、中国との貿易に支えられている。その中国は最近、北朝鮮からの石炭輸入の停止など、米国を中心とする対北朝鮮経済制裁に同調する動きを強めている。

中国としても、国際社会での立場や役割がある。と同時に、中国にとっての北朝鮮の戦略的価値は捨てることができない。今後、いろいろな局面で米国と対立することが増えてくる。それゆえに、中国にとって北朝鮮という存在は、負担にもなりえるし、逆に資産にもなりうる。だからこそ、北朝鮮にとって決定的に損になるようなことを中国はしないだろう。

もちろん、北朝鮮の核開発は正当化できない。だが、北朝鮮の核開発は中国以上に米国のほうが負担だ。だからこそ、北朝鮮の核開発は中国にとって「戦略的資産」(Strategic Asset)とも言えるだろう。

ハードランディングはあるのか?

――今後の北朝鮮と向き合う政策は、どうあるべきか。トランプが模索するような、武力を通じたハードランディングはありうるのか。

戦争はないだろう。被害があまりにも大きい。中国が核を保有したとき、とある大国が中国への軍事行動を検討したが、結局何もできないという結論になった。他国のケースでもそうだが、国際社会の反対を押し切り核開発をした国に対し、軍事的にできることは少ない。

旧ソ連の崩壊過程から、学べることは大きいと思う。アイゼンハワーとフルシチョフは、その前の時代のスターリンやトルーマンと異なり、核戦争がありえないことを認識していた。彼らは交渉の過程で、それぞれの国で自分の国で自慢できるものを展示し合う機会を持つことにした。

双方の体制の優位さをアピールするための試みだが、ソ連はその時、スプートニクを展示したが、アメリカは豊かな家電製品の数々を展示した。西側の生活水準の高さと、西側の情報が流入するようになったことが、旧ソ連崩壊の原動力となった。

北朝鮮では韓国ドラマがはやっており、それが脱北者の急増につながっているともいわれるが、国が豊かになり海外の情報が入ってくれば、無理な独裁体制は内側から崩壊せざるをえない。

今の北朝鮮の体制は、粛清を続けても政治的に安定化できるわけではない。高官は「次は自分が粛清されるのではないか」と疑心暗鬼になるし、すでに粛清された人々の長年の友人たちも、北朝鮮の指導部にはたくさんいるだろう。

国際社会からの情報流入が増えるなか、権力承継制度がなく、粛清が繰り返されて体制不安が増していけば、戦争がなくとも内部から瓦解するのが自明の理といえる。

ムーギー・キム 『最強の働き方』『一流の育て方』著者

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Moogwi Kim

慶應義塾大学総合政策学部卒業。INSEADにてMBA取得。大学卒業後、外資系金融機関の投資銀行部門にて、日本企業の上場および資金調達に従事。その後、大手コンサルティングファームにて企業の戦略立案を担当し、多くの国際的なコンサルティングプロジェクトに参画。2005年より外資系資産運用会社にてバイサイドアナリストとして株式調査業務を担当した後、香港に移住してプライベート・エクイティ・ファンドへの投資業務に転身。英語・中国語・韓国語・日本語を操る。著書に『世界中のエリートの働き方を1冊にまとめてみた』と『一流の育て方』(母親であるミセス・パンプキンとの共著)など。『最強の働き方』の感想は著者公式サイトまで。

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