2月14日のイエレン議長の議会証言後の指標は次の通りだ。2月15日発表の1月CPI(消費者物価指数)は前月比プラス0.6%と3年11ヵ月ぶりの大きな伸び。22日発表の1月中古住宅販売は前月比年率プラス3.3%と9年11ヵ月ぶりの高水準。28日発表の2月CB消費者信頼感指数は、2001年7月以来の高水準。3月1日発表の2月ISM製造業景況指数は57.7と2014年8月以来の高水準、1月の個人消費支出(PCE)物価指数は前年同月比プラス1.9%と2012年10月以来の高い伸びとなった。需給ギャップの縮小、労働需給のタイト化により、FRBのインフレ目標2%に近づいている。物価の上昇基調と内需およびマインドの強さは示されていたのだ。
FOMCメンバーが一致して地ならし
3月利上げへの警戒感が足りない市場に対して、ダドリー・ニューヨーク連銀総裁は2月28日のインタビューで、「大統領選挙以降、家計と企業の信頼感は大幅に回復し、金融市場はかなりの上昇基調」「財政政策はおそらく景気を一段と刺激する方向に向かうと予想されている」と述べた。その上で「金融政策を引き締める根拠は強まっている」とし、「見通しへのリスクは今や上振れ方向に傾き始めている」とまで語った。
3月1日にはハト派のブレイナード理事まで、「海外の成長はよりしっかりしたものとなり、見通しに対するリスクは以前よりも均衡しつつある」とし、「追加利上げは早期に適切になるだろう」と述べた。3日にイエレン議長は「米経済は著しく回復した」と評価し、景気回復で「雇用は実質的に最大まで増えた」と完全雇用に近いとの判断を示し、物価も「目標の2%に近づいている」と明言した。フィッシャー副議長は、大統領選後の景気改善や株価上昇を指摘し、「株価上昇によるアニマルスピリッツの高まりが、顕著な富の効果を経済にもたらす」との見解も示した。
以上のように2月28日から3月3日にかけて、FOMCメンバーによりタカ派的な発言が相次いだ。一体感のある3月利上げへの地ならしは、ある意味、お見事だ。
前述のメンバー発言から読み取れるように、その背景には、(1)世界経済の回復、原油価格安定による経済・物価見通しのリスクバランスの変化(上振れも意識)、(2)大統領選挙後の株高、新興国市場も含めた資産バブルへの警戒感、(3)2018年2月の議長任期を意識した早めの対応(やれるうちにやっておく)があると推察される。CMEグループのFedウォッチによれば、3月3日時点で市場が織り込む3月利上げの確率は79.7%まで上昇。6月にさらなる利上げを見込む確率は42.3%となった。
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