ダメな上司は部下の失敗を一緒に背負えない 防衛大で学んだ「連帯責任」の重み

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「今回の遅刻は、遅刻をしても許されるという空気が事業部全体に流れているためだ。1人のせいではなく、事業部全体の連帯責任にする。事業部を任せられている自分にも責任がある。明日からは遅刻をしたH君と私は1カ月間、毎朝始業1時間前の8時までに出社する」

H君は自分1人だけにペナルティが科せられると思っていたのか、「キョトン」とした表情です。

次の日から私とH君は、毎朝8時までに出社しました。最初は申し訳なさそうに出社していたH君でしたが、いつもより1時間早く出社し、私と話をする時間も増え、距離が縮まったせいか1週間ほど経ったときに、どうせ早く来るなら1日の行動内容のプランニングを一緒にやりたいと言い出しました。

断る理由もなかったですし、私も快諾し、毎朝2人でプランニングをするようになりました。 そして、就業時間どおりに出社するほかの営業マンたちにも早朝プランニングの話を自慢げに話し始めます。こうなったらこちらのものです。連鎖反応ではないですが、ほかの営業マンたちも早めに出社するようになります。

「災いを転じて福となす」ではないですが、H君の遅刻から1カ月も経った頃には全営業マンが自主的に遅くても8時までに出社し、営業の準備やロールプレイングなどをやり始め、事業部全体の空気がとてもよくなりました。

一緒に背負ってみるのもリーダーの甲斐性

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H君も反省していましたし、もう大丈夫だろうと思い、「8時までに出社する」というペナルティを解除したのですが、その後もH君の早朝プランニングは続きました。

後日、H君と2人で飲みに行く機会があったので、当時の遅刻の話をしたところ、こう返ってきました。

「遅刻したときは完全にアウトだと思っていました。ペナルティの内容次第では退職してやろうと正直思っていました。ただ、部長も一緒に責任を負うってことで……今まではこんなことがあるとただ怒られて終わっていましたから。なんて言っていいかわかりませんが、ありがとうございます!」

今でも「鍵付き事故」を起こした夜の、「同期は家族。家族のミスは連帯責任」という言葉を思い出します。

ただしかるだけだと部下からの反発も生みかねません。部下のみに連帯責任を負わせると部下たちの仕事に対する意欲が下がる可能性もあります。しかし、ルールを破った部下をほったらかしにもできません。再発する可能性が非常に高いためです。再発したら組織全体にメリハリがなくなり、いざ目標達成へ向かう際に一枚岩になりきれません。

そもそもですが、ルールを破りたくて破ったわけではありません。ミスも犯したくて犯す部下なんていません。部下がルールを破ったとき、ミスを犯したときこそ、口だけの注意だけで終わらず、一緒に背負ってみるのもリーダーの甲斐性です。

濱潟 好古 組織マネジメント・人材育成コンサルタント

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はまがた よしふる / Yoshifuru Hamagata

1982年福岡県生まれ。防衛大学校卒。IT系ベンチャー企業に営業職として入社。入社2年目から5年目まで売上№1営業マン。6年目に営業部長就任。防大時代に学んだ経験を元に独自に構築した「防大式マネジメント」を導入したところ、2年間で会社全体の売上を160%アップ、中堅、新人と関係なく、すべての営業マンに目標予算を達成させる。2016年、株式会社ネクストミッションを設立。「今いる社員を一流に」をモットーに中小零細企業の社長、大手生命保険会社のリーダー等に「防大式組織マネジメント」研修を開催している。

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