中国人富裕層の子女が、日本で直面する現実 なぜ親たちはそこまで過剰に期待するのか

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だが、別の予備校で働くある中国人教師は違う問題も指摘する。親の過干渉に悩むだけでなく、子どもが親を意識して、自分がやりたいことは二の次で、親の期待に応えなければと、頑張りすぎてしまい、まじめな子どもの中には精神を病んでしまうひどいケースがあるというのだ。

ある予備校に通う中国人男子留学生はこう打ち明ける。

「留学前、親が小さい頃の写真を見せてもらったら、すごく貧しそうで……。でも、親は自分がここまで頑張ったから、お前だって頑張れる、と僕にいうのです。もう時代が全然違うのに……。その言葉を聞くたびに、どんどんと気分が滅入っていき、日本にいても中国にいるようなプレッシャーを感じます」

また、北京市出身の女子予備校生は「今日本で通っている予備校は北京や上海出身の子が多くて、出身高校名をいえば、だいたいのレベルがわかります。それで私は仲間外れになったことがあって、一時期、つらくて予備校に通えなくなってしまいました。夜も全然眠れなくて、昼と夜が逆転したような日々が続きました」と話してくれた。

親のメンツのために頑張って“いい子”を演じる

こうした留学生について、ある予備校の講師は「つねに優等生でいなければいけない、親のメンツのために頑張って“いい子”を演じるという子どももいます。きっと幼い頃からそうしてきたんでしょうね。親は口では子どもに『あなたの好きなことをしなさい』といいつつも、アニメーションの研究をするよりは将来役に立つ経済学部に行ってほしい、と心の中で思っている。その本心を子どもも十分にわかっていて、自己犠牲の気持ちで勉強に打ち込んでいる子もいますね」と話す。

だが、見知らぬ外国でひたすら勉強に打ち込めるような精神的に強い子どもばかりではない。彼らはリッチであるがゆえにアルバイトの必要がなく、外との接点が少ない子もいる。日本人の友だちができない、生きた日本語が身に付かない、日本社会に溶け込めない、孤独にさいなまれる、などの悩みも抱えているという。

私が以前出会ったことのある中国人留学生も、「一日中部屋に閉じこもっていて、親しく話せる日本人は1人もいない」とさみしそうに話していたが、私があれこれアドバイスしても、自分からアクションを起こすということはなかった。

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