中国人富裕層の子女が、日本で直面する現実 なぜ親たちはそこまで過剰に期待するのか

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「自分の会社を継いで、もっと事業を拡大してほしい。子どもには自分よりももっと成功してほしい。そのためには他の中国人に負けない学歴として海外の有名大学に留学した経験や箔が必要だという論理です。親の見えやメンツのため、留学しなければ格好悪い、あるいは留学経験がないと(他のママ友たちに)恥ずかしいと親にいわれた、という話もよく聞きます」(同職員)

留学先に日本を選ぶ理由

留学先は日本とは限らず、中国人の留学先人気ナンバーワンはやはり米国だ。しかし、「米国は距離的に遠すぎて親として心配なこと、中国の高校の成績がよくなければ米国での激しい競争にはとても打ち勝てない、などの理由から、距離的に近くて中国で知名度の高い東大、早稲田がある日本は、今もって人気の留学先のひとつ」(同)だという。

親たちも無理をして送金しているわけではなく、経済的に十分な余裕があるから子を留学させている。なかには2000万~3000万円もの資金を出して都内にワンルームのマンションを買い、自分たちが来日したときにも便利なように、子どもに住まわせているケースもあるという。

私も以前取材した私立大学で職員から「最近は毎月5万円、8万円という額の奨学金を紹介しても、見向きもしない中国人が多いんですよ。親から十分な仕送りをもらっているからで、申請する必要がないからです」と聞いてびっくりした。親はそれだけのおカネを送っているからこそ、子どもにも強い期待をかけてしまうということなのだろうか。

日本でも中小企業の社長などが子どもに事業を託す、ということはよくあるが、2代目社長になるのに留学は必須ではない。地元か東京の大学に行って、卒業後に他の会社で数年間、武者修行してから帰ってきてくれればいい、という程度だろう。

だが、中国人の場合はもともと「子は宝」という意識が強く、わが子の教育には非常に熱心だ。富裕層に限らないが、よくいえば子煩悩、悪くいえば過保護、過干渉な親が多く、親子の結びつきは日本人よりも強い。それが「自分が築き上げたこの会社を継ぐならば海外留学くらいは必須」という子どもへの強いプレッシャーにつながってしまっているというのだ。

そのため親が毎日、微信(ウィーチャット)電話でモーニングコールをしてくるのは当たり前。予備校や日本語学校に問い合わせて、子どもの成績を確かめることもよくあるという。都内の予備校の中には、そうした親のリクエストに応えて、春節や国慶節などの大型連休に合わせてわざわざ保護者会を開いたり、授業参観と東京観光をセットにして親子がともに過ごせるツアーを組んだりするところもあるという。

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