フランスに「女子力」という言葉は存在しない

「カワイイ!」は子どもへの褒め言葉だ

それを、好き勝手に――まるで豹のごとく――野生的かつ個性的に仕掛けます。愛想笑いも男性を喜ばす“さしすせそ”の呪文もありません(「フランス男女が『激しい口論』も辞さないワケ」)。

「ありがとう」も滅多に言わない、愛想もない、なぜか自信満々で厚顔。パリジェンヌやパリマダムを見ていますと、「おくゆかしい」日本人が愛おしくなってくるほど。たおやかで細やかな挙措動作、静謐にしてよけいな言葉のない自己表現も、フランスのこの円熟した文化がもたらしたものに違いありません。

だから、女子力をフランス語に直訳してもまったく意味が通じません。
モテるための女子力をあえてフランスに訳すとしたら、「エレガンス(優雅)の力」になるでしょうか。ワインと女性はメロウな方がいいに決まっている――それが熟成した文化の知恵なのでありましょう。

「女子力」の高い男がモテる時代になってきた?

さて、日本の話に戻りましょう。女子力があるのなら、男子力とはどんなものでしょう? 重いものを持ってくれて「やっぱり男の子よね」と言うと、男性は照れ臭そうな顔をするかもしれませんが、それを「男子力がある」とは言いません。男性に特化したパワーといえば、スッポンとかマムシとかの動物名がつきます。言われて、必ずしも男性が喜ぶとは限らない、癖のある褒め言葉です。

多くの人に慕われるような、人柄がいい男性は「人間力がある」と言われます。女性に対して人間力はあまり使われないような気がします。ちょっとヘンです。人間力とは(経済力・人脈・決断力などの)妻子を養うために必要な甲斐性のことなのでしょうか。なるほど、いま新大陸で予測不可能な活躍をなさっている彼も3妻5子を養ってこられたパワーをお持ちですよね。

とはいえ、人間力が男性だけのものでよかったのは、せいぜい半世紀前までの話。現代はそう甘くはない。女性も働いて、家の半分を支えなくてはならないのです。それなのになぜ、女性から人間力を取り上げ、女子力を貼り付けようとするのか。なにかしらの陰謀があるとしか思えません。

一方、最近「女子力が高い」は、男性にとっての褒め言葉にもなってきているようです。どうやら男性にとって女子力が高いことは、“モテる男の条件”としても最近人気急上昇中のようなのです。家事や育児をして、相手に共感でき、協調性が高ければ、そりゃあモテるのは当たり前です。会社の人間関係もうまくいくと思いますね。そういえば、女性への「男前だね」は褒め言葉として定着しています。

ちなみに、日本では「優雅」と訳されるエレガンスは、女性だけに用いられる言葉であるように思われるでしょうが、フランスでは男性に対しても最高の褒め言葉の1つです。成熟した社会の気概を感じます。多様化した価値観を認め合うことこそ、人間としての成熟であることなのだ、と。

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センシュアリティの高さは、原理的には男であり女であることの特性からもたらされるものなのですが、それを表現する上では、男性であれば女性的、女性であれば男性的な部分を躊躇なくさらけ出すことだと私は思います。

すなわち、女性ならば勇気ある行動力、男性ならば、いわゆる「女子力」のことです。何人もの女性を泣かせ喜ばせた俳優・松方弘樹さんも亡くなりました。昭和の男もいよいよ絶滅した感じがいたします。いよいよ、パラダイムシフトが起こるのでしょう。

外見はともかくも、男女差は役割的にも文化的にもなくなりつつあります。そして脳科学や脳解剖学の研究でも、脳に男女差はないと言う人もいます。

ことさらに性差をフレームアップして潜在意識に埋め込む、女子力などという“洗脳学”は、個人にも社会にも有害無益の結果しか生み出さなかった、血液型性格診断レベルの似非科学なのです。

人間力を養いましょう。でも、人間力とはなにを指すのでしょう? 「より速く・より高く・より強く(Citius・Altius・Fortius)」、そんなオリンピックのスローガンみたいなものではありません。

人間にしかできないもの。それは他者へのシンパシーと思いやりです。多様性や個性を尊重すれば、美しさはこの世に満ちます。女子力という束縛から解放されて、自由なあなたを取り戻してみましょうよ!

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