「鉄道廃止」を受け入れた夕張市の狙いとは? 財政破綻の経験が生んだ「攻め」の姿勢
夕張市のような地方都市ではもともと公共交通への依存度が低く、いわゆる“現役世代”は通勤にも買い物にも自家用車を利用するケースがほとんど。鉄道にしろバスにしろ、公共交通は免許を持たない学生や病院通いの高齢者の利用が大半だ。特に、学生たちを運ぶスクールバスはややこしい事情を抱えているという。
「朝はみんな同じ時間ですが、夕方は部活動があるからスクールバスで帰る子もいれば路線バスに乗る子もいる。市内に6カ所あった小学校を清水沢地区に統合した際の条件として、スクールバスに立ち乗りをさせないというものがあった。そのためには大きなバスじゃないとダメですが、帰る時間はバラバラなので、逆に大きいバスでひとりふたりの子どもを運ぶこともある。さらに、小中学校は市の教育委員会だからスクールバスに乗せるけど、高校は道の教育委員会だから乗せない、とか(笑)。こんな非効率な話はありません。だったら、高校生もスクールバスに乗れるようにして、放課後の子どもたちが集まれる複合施設を作れば、運行本数を減らすことができるというわけです」
交通再編の背景に将来への危機感
ともあれ、市内の小・中・高校が集約されている清水沢地区を拠点とし、交通結節点も同地区に設けるという夕張市のコンパクトなまちづくり。南北軸を重視して路線バスを走らせ、東西の枝線は予約制のデマンドバスに転換するなど具体的な交通再編を推し進めている真っ最中だ。夕張市がこうした交通再編に取り組む背景には、将来に対する強い危機感がある。
「JRが廃止になってバス転換しますね。でも人口はどんどん減って空っぽのバスが走り続けるようになる。もちろん赤字ですが、自治体はバス転換の見返りの補助金で買ったバスをバス会社に貸したら、あとはなんとかなるだろう……と。そんなことでは、いつか行き詰まる。将来に負担を残すことになるんです」
ならば、“廃線受け入れ”に踏み切ることで、住民にも将来にわたって市内交通をどうすべきかという問題に向き合う機会を与えるとともに、さらに長期持続可能な交通体系を整備していく。廃線受け入れへの批判は承知の上で、地域の実情に合わせた交通再編に取り組む必要があるというわけだ。
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