「鉄道廃止」を受け入れた夕張市の狙いとは? 財政破綻の経験が生んだ「攻め」の姿勢
「市長は攻めの廃線と言いましたが、攻めているというよりは将来に負担を残さない。爆弾が破裂して行き詰まってから何を言ってももう遅いんです。そういう経験は、我々はもう既に嫌というほどしていますからね」
2007年の夕張市の財政破綻。その経験があるからこそ、一般的には自治体として受け入れがたいとされる“廃線”も受け入れ、抜本的な交通網再編や新しいまちづくりに踏み出すことができたというわけだ。佐藤主幹は「廃線だって新しいまちづくりにチャレンジするチャンス」と話す。
「破綻を経験してから、夕張ではこれまで100人以上の出向を受け入れて助けてもらった。だから、どうやって恩返しをしていくか。破綻して、役場に人が少ないし金もないから何もできない、ではない。これからの地方は『知恵の時代』だと思うんです。すぐに手を打たないといけない課題は山ほどあるわけで、問題先進地としてどんどん挑戦していく。そしてその事例をシェアしていければ」
その“挑戦”のひとつが夕張支線の廃止受け入れというわけだ。
地域にふさわしい交通のあり方を
鉄道路線の存廃議論では、自治体も事業者も地域の実情や利用者の実態にあわせて腰を据えた取り組みをすることが第一。ただ、実際には日常的に該当路線を利用しない人たちが大きな声をあげ、誰も土俵に上がらずに牽制し合うケースが目立つ。それでは結果が上下分離にせよバス転換にせよ、本質的な問題は何も解決しない。
夕張市のケースでは、鉄道の廃止受け入ればかりが注目されがちだが、むしろ重要なのはその地域にふさわしい公共交通のあり方を模索していくこと、というわけだ。
夕張支線の廃止は清水沢地区に交通結節点が完成してからになるという。現時点では数年以内には廃止される見込みだ。佐藤主幹も「もちろん寂しさはある。だからこそ、炭鉱路線だった頃の賑わいからどのような経緯で廃止を受け入れたのかということも含めて、伝えていくことも必要」と話す。
いずれにしても、破綻を経験した夕張市だからこその挑戦には、今後とも注目していく必要がありそうだ。
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